理化学研究所の小保方晴子元研究員らによるSTAP細胞の論文不正問題を特集した「NHKスペシャル」について、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は2017年2月10日、「名誉棄損の人権侵害が認められる」として再発防止に努めるようNHKに勧告した。NHK側は異例の反論コメントを発表した。
番組は2014年7月27日に放送された「調査報告 STAP細胞 不正の深層」。英科学誌「ネイチャー」に掲載された小保方氏らによるSTAP細胞論文を検証したものだ。
BPO「真実性・相当性が認められない」
放送後、小保方氏は「ES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていたと断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」などと主張し、申立書を提出。
これに対し、NHKは「『STAP細胞はあるのか』という疑問に対し、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したものであって、申立人の人権を不当に侵害するようなものではない」などと反論していた。
15年8月から審理していた放送人権委員会は、17年2月10日に「委員会決定」を公表。同番組で、小保方氏がES細胞を不正行為によって入手・混入し、STAP細胞を作成疑惑があると摘示したことについて「真実性・相当性が認められず、名誉毀損の人権侵害が認められる」と結論付けた。
また、番組放送直前にNHKがホテルのロビーで行った執拗な取材方法についても「放送倫理上の問題があった」と指摘し、
「本決定を真摯に受け止めた上で、本決定の主旨を放送するとともに、過熱した報道がなされている事例における取材・報道のあり方について局内で検討し、再発防止に努めるよう勧告する」
とした。
NHK「客観的事実を積み上げ、表現にも配慮」
これを受け、NHK広報局は、
「BPOの決定を真摯に受け止めますが、番組は、関係者への取材を尽くし、客観的な事実を積み上げ、表現にも配慮しながら制作したもので、人権を侵害したものではないと考えます」
とのコメントを発表し、小保方氏に対する人権侵害を否定。その上で、
「今後、決定内容を精査した上で、BPOにもNHKの見解を伝え、意見交換をしていきます。また、放送倫理上の問題を指摘された取材の方法については、再発防止を徹底していきます」
とした。