睡眠不足になると肥満になりやすいことは知られている。無性に甘い物を食べたくなるからだが、そのメカニズムはよくわかっていなかった。
筑波大学の研究チームが、マウスの実験から浅い眠り(レム睡眠)の減少が甘い物の過剰摂取に関係していることを突きとめ、英科学誌「イー・ライフ」(電子版)の2016年12月6日号に発表した。しっかり眠ることがダイエットの基本のようだ。
浅い「レム睡眠」が肥満のカギを握る
睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」がある。「レム睡眠」は「ぐったり睡眠」とも呼ばれる浅い眠りで、体は深く眠っているのに脳は活発に活動している。夢を見るのはこの睡眠の時だ。一方、「ノンレム睡眠」は「ぐっすり睡眠」とも呼ばれる深い眠りで、体も脳も休んでいる。人間は眠っている時に「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」を繰り返しているが、睡眠不足の人は「レム睡眠」が足りない人に多いといわれる。
筑波大学の発表資料によると、研究チームは、マウスの「レム睡眠」だけを減少させる装置を実験に使った。マウスの飼育ケースの底に金網を敷いた不安定な状態にすると、レム睡眠が特別に減る現象を利用し、睡眠不足のマウスを作った。そして様々なエサを選ばせたところ、通常のマウスに比べ、砂糖の主成分のショ糖が多い甘いエサや高脂質のエサを約3~5割多く食べた。
次に、遺伝子操作によって、味や香りを判断する脳の前頭前皮質の働きを抑えたマウスを作り、同様に睡眠不足にさせて実験を行なった。すると、通常のマウスに比べ、高脂質のエサは約3割多く食べたが、甘いエサの量は増えなかった。このことから、睡眠不足の状態にある時、体重を増加させる甘い食べ物を無性に食べたくなる欲求は、前頭前皮質が直接担っていることが判明した。
体重増加は糖尿病や心臓病のリスク高める
研究チームは発表資料の中で「私たちの研究で、レム睡眠と前頭前皮質、甘い食べ物の欲求が直接つながることを初めて示すことができました。レム睡眠が減ると、代謝やエネルギーバランスに悪影響を与える可能性が考えられます。レム睡眠は加齢とともに減ってきます。体重の増加は糖尿病や心臓病のリスクを高めてしまいます」と、しっかり睡眠をとり、健康な食生活を心がけるよう呼びかけている。