財務省の2016年貿易統計速報(通関ベース、17年1月25日発表)で、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は4兆741億円と、2010年(6兆6346億円の黒字)以来、6年ぶりに黒字になった。輸出、輸入ともマイナスになる中で、原油安により輸入額減が大きく減ったことが主因だ。
貿易収支は、2011年3月の東日本大震災で原発が停止し、火力発電向け燃料の輸入が急増したことで、同年から5年連続で貿易赤字が続いていた。ただ、足元では原油価格が上昇に転じ、米国のトランプ大統領が保護主義的な政策を打ち出すなか、今後も黒字が継続するかは見通せない状況だ。
輸出額は4年ぶり減少
2016年の輸入額は前年比15.9%減の65兆9651億円と、2年連続で減少。原油や液化天然ガス(LNG)の価格下落の影響が大きかった。具体的に見てみると、2015年末に石油輸出国機構(OPEC)が減産見送りを決め、原油の先物価格が一時1バレル=26ドル台まで下落。その後持ち直したものの、全体的に2016年は前年より安値で推移。為替水準も2016年は平均で1ドル=108円95銭と、前年より10%円高にふれ、円換算の輸入額を押し下げた。
一方、輸出額は7.4%減の70兆392億円と4年ぶりに減少に転じた。円高になったことで円換算の輸出額が減ったものだが、数量ベースで輸出をみると、0.3%増と伸び悩んでおり、震災前の2010年を100とすると、2016年は90.0にとどまっている。鉄鋼や自動車の輸出の不振が目立ち、中国をはじめ新興国の景気減速も響いた形だ。
今後を見通すと、OPECが非OPEC産油国とも強調して減産に踏み切り、足元の原油価格は50ドル台まで回復しているのに加え、米大統領選後の円安で、原油安・円高による輸入額の減少が長続きする保証はない――というのがちょっと前までの分析だったが、トランプ大統領就任に前後して、先行きが見通せなくなってきた。