高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
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経済学のマクロとミクロの区別

   マイナス金利を正確に述べれば、マイナスとなるのは日銀と金融機関の間の日銀当座預金にほぼ限定される。それも、日銀当座預金全てをマイナス金利にするのではなく、ごく一部であり、全体としては、金融機関は日銀の当座預金で、プラス金利となっている。これは、一般企業が金融機関に預けた当座預金はゼロ金利であることから、金融機関全体で年間2000億円程度の利ざやを稼いでいることになる。市場金利の低下による収益悪化のみが報じられ、こうした事実の報道はなされていない。

   しかも、最後の締めとして、「日本経済の復活、物価上昇率2%を実現する決定的な処方箋は『異例の政策』ではなく、産業競争力の強化や、将来のくらしを展望できる環境整備といった、より基本点な部分にある」と、急に何の脈絡もなく結んでいる。

   これは、NHKでこの記事を書いた人は、マクロとミクロの区別という経済学の初歩を学んでいないのだろう。マクロ経済政策なくして、デフレは脱却できない。というのは、デフレがマクロ経済現象だからだ。記事の文中に、プリンストン大のシムズ教授の意見も引用しているが、記事が、デフレ脱却にはマクロ経済政策である金融政策と財政政策ではなく、ミクロ経済政策の産業競争力の強化が重要という結論だと知ったら、教授はさぞかし嘆くだろう。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、 いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。 著書に「さらば財務省!」(講談社)、「図解ピケティ入門」(あさ出版)、 「これが世界と日本経済の真実だ」(悟空出版) など。


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