【林修の今でしょ!講座】(テレビ朝日系)2017年1月31日放送
「新常識を学ぶ『2017年 薬検定SP』」
今冬は大寒波に見舞われ、風邪やインフルエンザが流行している。薬を飲む機会が増えている人も多そうだが、気付かないうちに間違った薬の飲み方をしてしまっているかもしれない。
番組では、正しい薬の飲み方や最新の薬事情について、東京理科大学薬学部の上村直樹教授が解説した。
「食後」の薬、何も食べてなくても飲んでOK
そもそも薬を飲んだ時、体内では何が起こっているのか。
風邪薬の場合、有効成分は胃を通って腸で吸収され、肝臓に到着する。その後血液に入って全身に流れ、患部に作用する。
病院で処方された薬は、症状が同じだからといって家族で共有するのは絶対にNG。特に子供は要注意だ。
薬は体重に応じて飲む量が異なり、特に乳幼児は体重1キロあたりどのくらい飲むか決められている。薬は肝臓で代謝されるが、子供は肝臓の機能が未熟なので、大人と同じ薬を飲んでしまうと副作用ばかりが出る羽目になる。
体重が大人並みの大きな子供でも、臓器は未発達なので、親が処方された薬を飲んではいけない。
大人同士でも、アレルギーの危険性があるため厳禁だ。例えば錠剤を形作る材料の「カゼイン」は、牛乳に含まれる成分と同じで、牛乳アレルギーの人は注意が必要になる。
「食後」と指定された薬は、必ずしも何か食べてから飲まなければいけないというわけではない。昔は胃を荒らす薬も多かったが、近年そうした薬は少なくなってきている。
食後と書かれているのは、薬の飲み忘れ防止のためだ。「何時に飲んで下さい」と言われるとなかなか守れないが、三度のご飯は忘れないもの。「食事とセットで薬を飲むように」と覚えておくのが主な理由だ。
薬を飲んでいる間は血液中の薬の割合が一定になっているのが理想だ。1日3回飲む薬は8時間おきに飲むのがベストで、食事とセットでなくても忘れないならば、食後にこだわらず8時間おきで飲むとよい。
薬とサプリを飲むなら2時間空けてから
「水がないから」と錠剤やカプセルをそのまま飲むのは大変危険だ。食道に薬がくっついて溶け、その刺激で潰瘍ができるおそれがある。
特にカプセルは、表面がゼラチンでできていて、少量の水が付くとのり状になりくっつきやすくなる。水と一緒に一気に流し込むのが大事だ。
最近では、水なしで飲める「OD錠(口腔内崩壊錠)」という薬も登場している。ラムネのように口に入れるとシュワっと溶けるもので、唾液で流れるので食道への危険もない。
カプセルの薬は、カプセルを外して中身だけ飲んだ方が効果が高そうと思っている人がいるかもしれないが、これは間違い。カプセルは胃酸で薬が溶けるのを防ぎ、腸まで届ける役割があるので、外すと薬の効果が発揮できない場合がある。
処方薬には有効期限が表記されていないが、5日分として処方されたものは6日目以降は飲まない方がよい。医師は診察日の患者の容態に合わせて薬を処方しているので、期日を過ぎると副作用が出る危険がある。
抗生物質を処方された際は、症状が改善されたと思っても飲みきらなくてはならない。
例えば100匹の菌がいた場合、5日分の抗生物質をもらったが3日で飲むのをやめ、菌が5匹生き残ってしまったとする。残った菌は抗生物質に耐性を持ち、どんどん耐性菌をふやす。その結果、次に同じ抗生物質を飲んでも効かなくなるおそれがある。
普段飲んでいるサプリメントを、薬と同時に飲むのはNGだ。抗生物質とカルシウムのサプリメントを一緒に飲むと、カルシウムが抗生物質の成分にくっついて分子が大きくなり、吸収されにくくなるなど、飲み合わせが悪いものがある。
全てのサプリメントがダメなわけではないが、一般の人には見分けが付かないので、やめておいた方が無難だ。同時ではなく、2時間程度時間を空けてから飲むとよい。
胃腸薬は、胃酸が出すぎて胃が痛い時、アルカリ性の成分で中和する作用がある。オレンジジュースなど酸性の飲み物で飲んでしまうと、口内で中和してしまい薬の効果がなくなるので、水で飲むようにしよう。
市販薬も医療控除の対象となる制度開始
携帯するのを忘れたりなくしたりしがちな「おくすり手帳」だが、2016年4月に診療報酬が改定され、薬局に持参すると医療費が安くなると知っていただろうか。3割負担の患者では、最大で40円安くなる。
16年には、「CARADAお薬手帳」というスマートフォンアプリがリリースされた。対応する薬局では、QRコードを読み取れば自分の処方薬の情報をアプリに入れられる。家族全員分の薬も管理できるのが便利だ。
おくすり手帳として使えるアプリはいくつかあるので、自分に合ったものを使うとよい。
17年1月1日からは、処方薬だけでなく市販薬も医療控除の対象となる「セルフメディケーション税制」がスタートした。
約1600種類の市販薬が対象で、レシートに「★印はセルフメディケーション税制対象商品」「上記はセルフメディケーション税制対象商品です」などと表記される。
ただし、控除を受けるには確定申告で健康診断書などの提出が必要となる。詳しい条件は厚生労働省のサイトで確認を。