子どもを授かりたいと思うと同時に、「やっぱり女の子(男の子)が欲しい」と願う人が少なくない。そこで、様々な男女産み分け法が広まっているが、医学的根拠があるものはないといわれる。
そんな中、カナダと中国の研究チームが、「妊娠前の女性の血圧が高いと男子が、低いと女子が生まれやすい」という驚きの研究を発表した。研究者も予測しなかった結果で、「なぜそうなるのか、今後研究を深めたい」と語っている。
科学的根拠のある産み分け法は存在しない
この研究は、米国高血圧学会機関誌「American Journal of Hypertension」(電子版)の2017年1月17日号に発表された。研究を報告したのは、カナダ・トロント市にあるマウントシナイ病院の内科分泌学者ラビ・レトナカラン医師らのチームだ。
同誌の論文要約によると、母親の体質・特徴が胎児の性別に影響を与えることに関して多くの仮説があるが、明確な科学的根拠に裏打ちされた説は存在しないという。レトナカラン医師らは、妊娠前の女性の健康状態と生まれてくる子の性別との関連の研究を続けており、2009年から中国の専門家と共同研究をスタートした。
研究チームは、中国湖南省瀏陽市(りゅうようし)に住む妊娠を希望している女性1692人の協力を得た。女性たちの血圧、コレステロール値、中性脂肪、血糖値など様々な健康データを記録した。そのうち281人が調査開始時点で妊娠していることがわかり、対象から除外した。妊娠以前の健康状態が妊娠後の胎児の性別に与える影響を正確に検証するためだ。対象者は1411人になり、健康データが妊娠するまで平均26.3週間(約184日間)調べられた。
その後、女性たちは全員出産した。生まれた子は男子が739人、女子が672人だった。年齢、学歴、喫煙状況、腹囲、LDL(悪玉)コレステロール値、HDL(善玉)コレステロール値、中性脂肪、血糖値、血圧などのすべての要素と、生まれた子の性別との関連を調べた。すると、ほとんどの要素で性別との関連がみられず、唯一、血圧の高さとの関連が浮かび上がってきた。
そこで、改めて血圧以外の要素を調整し、血圧の高さと性別とを分析すると、男子を生んだ母親の妊娠前の収縮期血圧(最高血圧)は平均で106.0mmHg、女子を生んだ母親は平均で103.3mmHgと、男子を生んだ母親の方が高かった。両者の差2.7mmHgだが、この数値は統計学的に有意な差だという。
性別を決める基本的なメカニズムの謎
血圧の高さの差は、何を物語っているのだろうか。レトナカラン医師は論文要約の中でこう語っている。
「妊娠前の女性の血圧が、男子や女子を生む可能性に影響を与えることは、今回の研究以前に誰も認識したことがありません。この発見は、人間の性別を決める基本的なメカニズムに関係があるのかもしれません。今回の結果が本物であるかどうか、また、どうしてそうなるのか、研究を深めていきます」