阿南久消費者庁元長官がパソコン量販チェーン「PCデポ」のアドバイザーに就任していたことについて、国会で「用心棒みたいだ」と追及を受けた。阿南氏は、現在も非常勤の消費者庁参与をしているが、消費者庁やPCデポでは、「天下りではない」と説明している。
PCデポを巡っては、2016年8月、高齢者に高額の解約料を支払わせるなどしていたとツイッターで指摘されて騒ぎになった。
雪印メグミルクでも問題指摘
その後、PCデポでは、高齢者が理解できるサービスに改善すると表明していたが、17年2月7日の衆議院予算委員会では、民進党の井坂信彦氏が消費者庁の天下りを指摘する中でPCデポのケースを取り上げた。
井坂氏は、阿南久氏が16年12月にPCデポのアドバイザリーボードのメンバー6人の1人に選ばれたことに触れ、「もともと消費者庁の長官までされた方が、こういうところにまた再就職をしておられる」と述べた。PCデポ側が改心して生まれ変わるならいいとしながらも、「なんか用心棒みたいに入れたんちゃうかみたいなことも、受け止めもあるようですので、これ一ついいのか」と疑問を呈した。
阿南氏は、生協活動を経て全国消費者団体連絡会の事務局長を務めた後、12~14年に消費者庁長官に就任。退官後、雪印メグミルクの企業倫理委員会委員に就任し、現在も務めている。しかし、長官在職中にメグミルクと就職を約束していたことについては、消費者庁が15年10月に違法な天下りに当たる国家公務員法違反と認定している。ただ、退官後のため、処分などはしていない経緯がある。
PCデポについても、現在の岡村和美消費者庁長官が16年8月の定例会見で、高額な解約料などの消費生活相談が寄せられており、「相談の状況を注視して参りたい」と発言している。また、従業員と名乗る人物がツイッターで翌9月、PCデポの価格表記が景品表示法違反(優良誤認)に当たるのではないかなどとして、消費者庁に公益通報したと明かす事態にまでなっていた。
PCデポ「規制を見逃してもらおうということではない」
国会で取り上げられたことを受けて、ツイッター上などでは、阿南氏は、現在も消費者庁参与をしており、PCデポ・アドバイザー就任は天下りではないのかといった批判や疑問が出ている。
この点について、消費者庁の総務課では、J-CASTニュースの取材に対し、次のように言う。
「長官在職中にアドバイザーの約束をしたのなら違反になりますが、非常勤職員は、兼業が認められており、天下りでも違反でもありません。アドバイザーは、外部の有識者による第3者の意見を採り入れ、企業を改善するのが趣旨ですので、『用心棒』というのは言い過ぎだと思います。就任の評価は難しいですが、少なくとも問題があるとは考えていないです」
従業員と名乗る人物の通報などはどう扱われたかについては、消費者庁の表示対策課では、「個別の案件については、調査しているかいないかも含めてお答えしていません」と取材に話した。ただ、PCデポに対して、これまで措置命令などの行政処分をした事実はないとはしている。
一方、PCデポを運営するピーシーデポコーポレーションの広報課は、阿南氏のアドバイザー就任について、取材にこう説明する。
「消費者の代表として、月1回の定例会議で企業を改善するためのアドバイスをいただいており、消費者庁からの天下りとは違います。用心棒でもありませんし、規制を見逃してもらおうということではないです」
消費者庁に通報したという従業員と名乗る人物については、従業員とは確認していないといい、消費者庁から高額な解約料などの件で指導を受けるなどしたことはないとも言っている。