過激な大統領令の連発などトランプ米大統領の強権的な手法が米国の内外で混乱を招いているが、ドイツの有力誌「デア・シュピーゲル」最近号に掲載された過激きわまりない表紙が物議をかもしている。
先週発行されたばかりの2月4日号ではトランプ氏を思わせる人物が、右手に「自由の女神」の首、左手には血まみれのナイフを持つという大胆きわまりない構図だ。
キューバから米国入りした元政治難民が描く
この表紙はトランプ氏が、非情なテロ組織のイスラム国が捕虜や人質を残酷に処刑したように、米国だけでなく、世界で自由の象徴とされている自由の女神を斬首したところを連想させる。トランプ氏のスローガン「AMERICA FIRST」(アメリカ第一)を小さく書き入れる念の入れようだ。
デア・シュピーゲルは毎週100万部以上を発行するとされる欧州最大のニュース週刊誌。進歩的な論調が売り物で、時には政府との対立も辞さないリベラル・メディアとして知られている。
しかし、これほど刺激的な表紙にはドイツ国内でも批判が出ている。ドイツの有力紙「ディ・ヴェルト」は「シュピーゲルの表紙はジャーナリズムの価値を下げる」と批判した。「トランプ氏と(テロ組織である)イスラム国を比較し、そのショックを利用し、シュピーゲルに関心を集めるやり方だ」と非難している。やはり有力紙のフランクフルター・アルゲマイネは「表紙は皮肉のセンスを欠いており、トランプ氏とイスラム国を同列に扱うのは単純化しすぎだ」と指摘している。
米国の新聞、ワシントン・ポストによると、表紙を描いたエデル・ロドリゲスさんは1980年にキューバから政治難民として米国入りしたという。ポストの取材に、「この表紙を描いたのは、イスラム国とトランプ氏という両極端な過激主義を比較したかったから」と話している。
ロドリゲスさんは先月27日、トランプ大統領が出したイスラム系7カ国からの入国禁止令に触発されたといい、「(この命令が)民主主義の斬首、聖なるシンボルの斬首につながる」と説明している。
欧米で相次ぐトランプ批判の表紙
シュピーゲルのクラウス・ブリンクバウマー編集長は論説で、「トランプ氏はトップからのクーデターを意図し、狭量な民主主義を創りだそうとしている」と表紙掲載の意図を説明している。同氏はドイツの通信社DPAに、「この表紙は、アメリカの大統領が、1886年以来、移民や難民を民主主義と自由とともに、アメリカに迎え続けるシンボルを斬首したことを表現している」と話している。
シュピーゲルほど過激ではないが、欧米のメディアはトランプ大統領の強権的な手法に反発し、就任直後から一斉に批判的な表紙を掲載している。
ニューヨークで発行される高級週刊誌「ニューヨーカー」は最近号で、自由の女神が持つトーチの火が消えようとしているところを表紙にした。イギリスの経済週刊誌「エコノミスト」はトランプ氏を、火焔瓶を投げつけようとする暴徒として描き、「ホワイトハウスに侵入する暴徒」という説明をつけている。