児童書シリーズ「かいけつゾロリ」の最新刊に、実在の有名人や有名ブランドのパロディーが挿入され、ひそかな話題になっている。
その中では、アメリカのトランプ大統領や「高須クリニック」の高須克弥院長、ドン小西さんなどを彷彿させるキャラクターが続々登場し、児童書としては異例の展開だ。
世界的な整形外科「バカス院長」も
『かいけつゾロリ』は1987年から続くポプラ社の児童書シリーズ。キツネの主人公・ゾロリとイノシシの双子、イシシとノシシら擬人化した動物の冒険を描いた作品だ。
なぞなぞを解いたり、悪巧みしたりするのが得意なゾロリ、そんなゾロリを献身的に支えるイシシ・ノシシが、さまざまな試練を乗り越えていく。小学生の間で絶大な人気を博し、04年にはアニメ化された。
最新刊(60巻目)の『かいけつゾロリの王子さまになるほうほう』は16年12月に発売。なぞなぞ好きなある国のお姫さまが王子募集のオーディションを開き、ゾロリたちも参加する。ダイナミックなストーリー展開もさることながら、一番の特徴は、そこかしこに散りばめられたパロディーと社会風刺だ。
ゾロリと最後まで争うアヒルは、派手なスーツと金髪が特徴の「ドランプ」。第45代米大統領に就任したドナルド・トランプ氏を想像させるキャラクターだ。「なんでもかんでもお金でかいけつする」性格で、「お金でかえないいえがらをこのけっこんで手にいれたい」と意気込むセリフを吐いている。
一方、そんなドランプの助っ人は「せかいてきなせいけいげか」である「バカス・クリニック」の「バカス院長」と「ちょう一りゅうのコーディネーター」の「ドンコニシキ」で、高須院長とドン小西氏のパロディーと思わせる。セリフも、
「年をとればとるほど、わかがえらせるぎじゅつをもっているのはわたくしです! かいぞうにんげんだっていいじゃない」(バカス院長)
「きいろはふうすいで、金うんをもたらすいろ」(ドンコニシキ)
と、明らかに当人たちを連想させるものになっている。。
ポプラ社「気づいた子に楽しんでもらうための工夫」
これに加え、「キケゾウ」「ブタまる」「ヒョウタ」「ゲターズ・いぬだ」「太木かずこ」「しまった・ちゅうへい」「Dr.けんコパ」など、「笑点」出演者や人気占い師のパロディーキャラも登場する。
また、モノの名前も「アーセーコーセーけしょうひん」「いっぱいかおうけしょうひん」「ジマンシー」「カバルンクライン」と実在の社名やブランド名がモチーフになっている。
こうした内容から、ネット上でも
「とにかくおもしろい」
「躊躇なく時事ネタぶっ込むところがいい」
とツイッターなどで話題を集め、子どもだけでなく大人も楽しんでいるらしい。
かいけつゾロリシリーズの作者・原ゆたかさんは今回に限らず、これまでも時事ネタを取り入れてきた。たとえば、14年8月発売の『かいけつゾロリの大まじんをさがせ!!』には「わたしにスタッフさいのうはあります」と主張するカタツムリや、作曲マシーンで大儲けして「くさむらおうち」に暮らしたいと語るキリギリスが登場する。
最新刊でトランプ大統領などのパロディーを挿入した意図は何かをポプラ社に取材すると、
「今年30周年を迎えた児童書シリーズ『かいけつゾロリ』はスピード感のある物語に加え、おやじギャグやなぞなぞ、迷路や間違い探し、隠れキャラなど、読者の子どもたちが『何度読んでも楽しめる』ための仕掛けがすみずみまでたくさんでてきます。パロディーも気づいた子に楽しんでもらうための工夫のひとつです。最新刊だけでなく、これまでも多くの巻で盛り込まれています。気になった方は『かいけつゾロリ』シリーズを手にとってみていただければと考えております」
との答えが返ってきた。