日本の受動喫煙対策が進まない大きな原因はマスメディアの消極的な報道姿勢だ・・・日本禁煙学会の作田学・理事長らは2017年 1月31日、外国特派員協会で記者会見し、海外のメディアに日本の実情を訴えた。
学会は06年に発足、神経内科医の作田さんはじめ、4000人の会員がいる。IOC(国際オリンピック委員会)の理念にもとづき、受動喫煙防止環境での東京オリンピック開催に協力している。その支障になっているのが報道、という。
具体的な事例を挙げて説明
作田さんはまず、 1月に掲載された電子 (加熱式) タバコのカラー全面 2ページ見開き新聞広告を示し、WHO(世界保健機関)のFCTC(タバコ規制枠組条約)13条では新聞紙面でのタバコ広告を禁じているが、日本では自主規制段階と指摘、次々に具体的な事例を挙げた。
受動喫煙法案の新聞記事は反対派の意見も入れ、両論併記になる。民放局の報道番組の多くはJT(日本たばこ産業)がスポンサーなので、タバコに関するニュースは出ない。健康番組で出演者がタバコの危険性を訴えてもその部分は削除され、ほとんど放映されない。喫煙者でもある著名人が肺がんで死亡してもタバコとの関係は出ない。NHKの健康番組はタバコを取り上げてくれるが、年に1 、2 回だ。そのNHK経営委員に安倍首相はJTの元社長を任命した。
JTの広告が多い夕刊紙や有力週刊誌では、禁煙派を誹謗・中傷する記事がしばしば出る。JTの国内での広告費は年間約 800億円ともいわれる。意を受けた大手広告会社はテレビ、新聞、雑誌、ネットの反タバコ記事に常時目を光らせており、出稿停止をちらつかせる。
タバコ販売・耕作者組合から献金を受けているタバコ族議員は受動喫煙防止法を妨害している。政府はJT株式を持ち、配当を受けており、財務省とJTは天下り、天上りで密接な関係にある、などなど。
作田さんは「ぜひこうした日本の状況を広く知らせてほしい。日本は外圧に弱い国。みなさんの力で変えてほしい」と訴えた。(医療ジャーナリスト・田辺功)