進む「日系メーカーの米現地生産」
トランプ氏は公約通りに大統領就任早々、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱を表明。今後、日本に対してはTPPに代わる日米2国の通商交渉を始めることを迫ってくるとみられている。日本政府としてはあくまでTPPの意義を主張してトランプ氏に「復帰」を促したい考えだが、TPP離脱を掲げて当選した大統領に対していつまでもそんなことを言っていられないのも現実だ。電話会談では、2月10日の日米首脳会談に向けて、まずはトランプ氏の「不公平」との主張に首相が「抵抗」したと言える。政府は現在のTPP対策本部を改組し、日米2国間交渉も視野に入れた交渉通商交渉全般を統括する組織を設ける。
ただ、日米の自動車貿易はかつての摩擦時代とは様変わりしており、日系メーカーの米現地生産が進んでいる。米国で販売する自動車を米国で生産する比率はトヨタが7割、日産自動車は8割、ホンダにいたっては9割に及ぶ。一方で、米メーカーの自動車に対する日本の関税はゼロなのに対し、逆の日→米は2.5%の関税がかかる。トランプ氏は規制など非関税障壁が日本側にあると主張する見込みだが、「アメ車が日本で一部の好事家にしか売れないのはドイツメーカーのように右ハンドル車を作るなどの売る努力をしないため」というのが日本の自動車業界の常識だ。
とはいえ、米国市場が「ドル箱」である以上、トヨタとしてはトランプ体制のもとで新たなロビー活動を展開せねばならない。目をつけているのはペンス副大統領だ。実際、新投資を発表したインディアナ州はペンス氏が直前まで知事だった地元。トヨタとも以前からつながりがあり、豊田社長はデトロイト自動車ショーに参加した際にワシントンに立ち寄ってペンス氏と会談した。ただ、この「ペンス詣で」も今のところ目立った成果はあがっておらず、トランプ氏への対応に官民で頭を悩ませる日々が続きそうだ。