米国のドナルド・トランプ大統領が、難民の受け入れ停止やイスラム圏7か国からの入国禁止を指示する大統領令に署名したことを受け、コーヒーチェーン最大手のスターバックスが打ち出した「対抗措置」が米インターネット上で賛否を広げている。
問題となったのは、米スターバックスのハワード・シュルツ会長兼CEOが2017年1月29日(現地時間)に発表した声明文だ。その中でシュルツ氏は、トランプ氏の「移民制限令」に抗議するとともに、今後5年間で新たに1万人の難民を雇う計画に取り組むことを宣言したのだ。
「♯BoycottStarbucks」がツイッターのトレンドに
シュルツ氏の声明によれば、難民の雇用はスターバックスが展開している世界75か国で実施される。計画は米国内から始める予定で、主に米軍で通訳や支援の業務を行っていた人を雇用の対象にするという。
こうした計画に猛反発を見せたのが、トランプ氏を支持するネットユーザー達だった。他国の難民よりも、自国の失業者や退役軍人などの就職を優先すべきだとして、
「スターバックスは米国人よりも難民を大事にするのか」
といった批判を送るユーザーがSNS上に続出したのだ。
ツイッターには「♯BoycottStarbucks」というハッシュタグが登場し、スターバックス商品の「不買」を呼び掛ける動きが盛んに。現地1月30日には、ツイッターの「トレンドワード」にも、一時このタグが選ばれるほどの騒ぎとなった。
さらに、カリフォルニア州在住のツイッターユーザーが現地2月1日に投稿した動画によれば、トランプ氏の支持者と見られるグループが、バークレーのスターバックス店舗を「襲撃」する騒動も起きた。この動画を見ると、長い棒のような物で店舗の窓を打ち破る男性の姿が確認できる。
その一方で、トランプ氏の「移民制限令」に反対するツイッターユーザーは、「♯DrinkStarbucks」「♯BuyStarbucks」などというハッシュタグを使って、スターバックスの計画に賛同する意思を表明。加熱するボイコット運動を「人種差別的」と切り捨て、同社を応援するために商品を購入するように呼びかけ合っている。
こうしたスターバックスの計画をめぐるSNS上での騒動は、CNNやFOX、ウォール・ストリート・ジャーナルをはじめ、数多くの米有力メディアが取り上げており、現地では大きな注目を集めている。
現地日本人「不買運動は聞いたことが無い」
今回の騒動は海を超えて日本のネット上でも注目を集めており、ツイッターには、
「普段は飲まないが、明日スタバ飲む」
「難民雇用計画は、企業として社会に貢献する優れた手段だと思ったけど、トランプ派からすれば不買運動になっちゃうのか」
「難民の前に国内の失業者を雇用しろという意見は妥当だと思う」
「スタバの不買運動、移民に職を奪われるという危機感のためか。日本人の感覚からは遠い話だな」
といった投稿が寄せられている。日本語のかきこみでも、「不買運動」や「購入運動」を始めたと宣言するユーザーも出ていた。中には東京都内の店で買った、と購入運動を報告する人もいた。
このように、世界中のネットユーザーから注目を集めている今回の騒動を、現地に住む日本人はどのように見ているのだろうか。米スターバックス本社があるシアトル在住の40代の日本人女性は2月2日のJ-CASTニュースの取材に、
「こうしたニュースは盛んに取り上げられていますが、実際に周りで不買運動をしているという話は聞いたことがないですね。シアトルはトランプ氏に反対する人が多い地域なので、その影響はあるかもしれませんが、SNSでの過剰な盛り上がりにはちょっと違和感も覚えます」
と話した。
なお、スターバックスの日本法人「スターバックスコーヒージャパン」の広報担当者は2日のJ-CASTニュースの取材に、今回のシュルツ氏の「難民雇用計画」について、
「現時点では、国内での対応については何も決まっていません」
としている。