WBCを前に大谷翔平が「投げられない」。
2017年2月1日、突然のニュースは全国にあっという間に広まった。それはどの球団も恐れていたことだった。
侍ジャパンの強化試合で右足を痛める
米国アリゾナ州での日本ハムキャンプ。予想通り大谷は現地メディアの大きな話題だった。
「メジャー入りすれば、エースにもなれるし、ホームランは50本近く打つだろう」
そして、日本円にして300億円の契約も夢ではない、との見方も。大リーグのスカウトも見に来ている。オフの争奪戦は早くも火ぶたを切ったという状況にあった。
さあ、これから練習、というときに、3月のWBCは投手としては無理、との球団の発表だった。
大谷はこう語っている。
「右足首を痛めている。(WBCには)間に合わないので...」
その前に栗山監督がその旨を明らかにした。
「このままだと(大谷が)壊れてしまう」
足首を痛めたのは昨年11月の侍ジャパンの強化試合。日本シリーズが終えて間もないときのことだった。それが治らず、引きずってきたというわけである。
「日本がWBCで優勝奪回」どころじゃない!
この大谷の緊急事態を敏感に反応したのは各球団だった。
「もっとも恐れていたことが起こったんだよ」
侍ジャパンの試合は、公式戦とは別に行われるもので、選手は全チームから選抜されるが、目的は収入を得ることである。各球団が喜んで選手を送り出すかというと、決してそうではない。
「余分な試合でケガをされたら本番の公式戦に影響する。それがもっとも不安なのだ」
こういう声は多く、本音といっていい。だから「そら、見たことか」となるのだ。
日本ハムにとって大谷が無理をしてWBCに出場して悪化させたらペナントレースが戦えなくなる。WBCで日本が優勝奪回どころの話ではない。
WBCの小久保監督は突然の話に我を忘れたようだったという。
そうだろう。大谷は問題の強化試合で剛速球を投げたし、打撃では東京ドームの天井にぶつけるパワーを見せた。しかも「客を呼べる選手」(栗山監督)で収入につながる。
大谷を除くWBCメンバーは国内キャンプで本格練習に入ったが、少しでも体に異常が感じられたら辞退もありうる。所属球団の監督たちは余計な心配事が増えた。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)