「日本がWBCで優勝奪回」どころじゃない!
この大谷の緊急事態を敏感に反応したのは各球団だった。
「もっとも恐れていたことが起こったんだよ」
侍ジャパンの試合は、公式戦とは別に行われるもので、選手は全チームから選抜されるが、目的は収入を得ることである。各球団が喜んで選手を送り出すかというと、決してそうではない。
「余分な試合でケガをされたら本番の公式戦に影響する。それがもっとも不安なのだ」
こういう声は多く、本音といっていい。だから「そら、見たことか」となるのだ。
日本ハムにとって大谷が無理をしてWBCに出場して悪化させたらペナントレースが戦えなくなる。WBCで日本が優勝奪回どころの話ではない。
WBCの小久保監督は突然の話に我を忘れたようだったという。
そうだろう。大谷は問題の強化試合で剛速球を投げたし、打撃では東京ドームの天井にぶつけるパワーを見せた。しかも「客を呼べる選手」(栗山監督)で収入につながる。
大谷を除くWBCメンバーは国内キャンプで本格練習に入ったが、少しでも体に異常が感じられたら辞退もありうる。所属球団の監督たちは余計な心配事が増えた。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)