東京大学医学部付属病院は2017年1月31日、入院患者に誤って内服薬を注入する事故があり、患者はその翌日に死亡していたとウェブサイトで発表した。病院は遺族に謝罪した。
病院は、薬の誤注入が患者の死亡に「何らかの影響を与えた可能性がある」ものの、影響の程度について「医学的な判断は困難」としている。
作業中断後、別の患者の薬を誤って取った
発表によると、事故があったのは2015年。亡くなった患者Aさんは、多臓器の障害がある重篤な病状で、点滴と人工呼吸器が必要な状態だった。
内服薬は、専用の注入器具を使って鼻から胃へと投与していた。看護師がAさんのための内服薬を調整したが、電話対応のため作業を中断し、調整した薬を作業台の上に置いた。ところが作業再開時、置いておいたAさんの薬の近くにあった別の患者Bさんの薬を誤って取り、確認を行わないまま、AさんにBさん用の薬を注入した。その翌日、Aさんは死亡した。
事故発生後、病院は事故調査委員会を設置して調べた結果、薬の誤注入がAさんの死亡に「何らかの影響を与えた可能性がある」としている。ただ、誤注入によって血圧が低下したものの、「血圧低下は誤注入前からしばしば認められていたという経過もある」ため、Aさんの死亡に「どの程度の影響を及ぼしたかという点についての医学的な判断は困難」だとしている。
その上で、「影響の程度のいかんにかかわらず、薬剤の取り違えによる誤注入という今回の事故は極めて重大であり、病院として深く反省しなければならない」として、再発防止のため、内服薬の準備・注入時に行う院内ルールの徹底に加え、薬剤管理や看護師の業務環境といった業務上のシステム改善に取り組んでいるという。
病院長は以下のコメントを出した。
「まず、お亡くなりになった患者様のご冥福をお祈り致しますと共に、今回の事故により多大なご迷惑、ご心労をおかけした患者様とご家族に深くお詫び申し上げます。事故調査委員会の指摘事項を真摯に受け止め、病院全体で改善の取り組みを今後も続けて参ります」