米国のドナルド・トランプ大統領が2017年1月27日の大統領令で、シリアなどの難民や中東・アフリカ7か国の人の入国を一時禁止としたことを受けて、ANAホールディングスと日本航空(JAL)が、対象者の米国便への搭乗を原則断ることにした。
米メディアによると、トランプ大統領の大統領令によってニューヨークやワシントンDC、カリフォルニアなどの空港で、米国に入国できずに拘束されたり、飛行機に搭乗拒否されたりした人は、1月28日に280人超にのぼっており、空港周辺などでは大規模な抗議デモが繰り広げられる事態になっているなか、日本の大手航空会社の対応をめぐって議論が起きている。
対象7か国のパスポートで米国入国の可否を確認
米国のトランプ大統領が中東やアフリカ7か国からの入国を一時禁止したことを受けて、ANAホールディングスと日本航空(JAL)は2017年1月30日、日本発の米国便のチェックイン時に対象7か国のパスポートを所持した旅客に対して、米国入国の可否を確認する措置を決めた。
ANAによると、チェックインのとき、外交官ビザ(査証)やグリーンカード(米永住権カード)を所持しているかどうかをチェックしたうえで、米国国土安全省 税関・国境取締局(CBP)へ入国可能かどうかを確認。了承を得られれば、搭乗できるようにする。それ以外の旅客は原則、搭乗しないよう案内する。
ANAは「(7か国から米国への渡航者は)ふだんからほとんどおらず、1か月に若干名です」とし、対象者への対応については「引き続き検討中です」と話す。
また、JALは、「7か国のお客様がすべて搭乗できないわけではありません。ビザによっては可能なケースがありますから、マニュアルに則って(CBPへの照会・確認)対応しています」と説明する。JALによると、1月31日15時時点では「(搭乗を断った)対象者は一人もいません」という。
ところが、ANAやJALがとった措置に、ツイッターやインターネットの掲示板などではこんな声が寄せられている。
「よりによって、なんでANAやJALがトランプの片棒をかつぐんや。おかしいやろ」
「JALもANAもABEも、トランプの子分かよw」
「トランプに屈するのか!」
「ANAもJALも、なにトランプの言いなりになってんねん」
などと、まるでANAやJALがトランプ大統領を「支持」しているかのようにとらえて批判する声が相次いでいる。
エールフランスやKLMオランダ航空も同様の措置
そうしたなか、あるツイッター主がこれに反論。
「『ANA、JALがイスラム諸国の国籍を保有する人をアメリカ便に搭乗させない』というニュースで、なぜか『ANAとJALがトランプの言いなりになった』とか誤解されているよう」
などと、2017年1月30日付で投稿した。
このツイートには賛同者が多く、ツイートが拡散されたうえ、インターネットの掲示板などに、
「これじゃ仕方ないんじゃない? 日本の航空会社でどうこうできる問題じゃないんでは」
「日本から搭乗させたって、あちらで入国出来なきゃ意味ないもん」
「なんか勘違いしてない? 入国できない人を乗せられないのはエアラインのルールだから」
「アメリカの空港で拘束ないし待ちぼうけくうより日本にいたほうがいいんじゃね?」
「これはいいんじゃないの。米国がOK出してからじゃないと...」
「入国停止の人を無責任に運ぶわけにいかないし、航空会社を責めちゃ可哀想だろ...」
といった声が続々と寄せられている。
ANAやJALが中東・アフリカ7か国からの米国便への搭乗を断る措置は、国際航空運送協会(IATA)が米国の大統領令の内容を、世界の航空各社に周知したことを受けたもの。IATAは約120か国、約265社の航空会社が加盟する業界団体で、安全・保安や運賃、運航などの共通のルールを決めたり、航空業界の指針をまとめたりする。ただ、強制力はないとされる。
今回の米国の「大統領令」への対応については、仏エールフランスやKLMオランダ航空など欧州の航空会社も、ANAやJALと同様の対応をとっている。
万一、搭乗した乗客が米国に入国できなかった場合はどうなるのだろうか――。J‐CASTニュースの取材に、JALは「チェックインのときに確認するので、まず搭乗されることがありません。そのため、(日本に戻される事態が)発生することも考えられません」と説明している。