米の有名IT企業が続々「反旗」 トランプ「移民締め出し」が総スカン状態

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   米国のドナルド・トランプ大統領(70)が大統領令で、難民の受け入れと中東やアフリカの7か国からの移民らの入国を一時的に停止・制限した「移民締め出し」政策に、米IT企業の経営者らが批判の声をあげている。

   米国のIT企業は、イスラム圏を含む世界中から優秀な人材を集めて技術革新を生み出してきたばかりか、多くの移民や移民出身者が企業活動を支えているのが現状。トランプ大統領の排他的な政策が実行に移されたことで、IT企業に動揺が広がっている。

  • トランプ大統領の「移民締め出し」で、米IT企業が「そっぽ」…
    トランプ大統領の「移民締め出し」で、米IT企業が「そっぽ」…
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FacebookのザッカーバーグCEO「米国は移民の国」

   「米国ファースト」を掲げるトランプ大統領が2017年1月27日に署名した大統領令は、テロ対策を強化するため、シリア難民の受け入れを停止し、シリア人以外の難民も120日間停止。さらにシリア、イラク、イラン、リビア、ソマリア、スーダン、イエメンの7か国の移民の入国を、一部の例外を除き90日間禁止した。いずれも、イスラム教徒が多い国だ。

   この署名を受けて、世界各地で米国行きの航空機への搭乗が拒否されるケースが相次ぎ、混乱が起きているほか、米ニューヨークのケネディ空港や首都・ワシントン郊外のダレス空港、カリフォルニア州サンフランシスコ空港などでは、「署名反対」の大規模な抗議デモが広がっている。

   米国の永住権を保持している人や、これらの7か国との二重国籍の人でも、原則、入国できなくなり、一時帰省していた人や出張中だった人も米国に帰れなくなってしまう恐れがあるという。

   そうしたなか、米メディアが1月28日に伝えたところによると、米IT大手、Googleのスンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO、44)が、出張や旅行で米国外にいる人は速やかに帰国するよう、社員宛てにメールを送り、促したという。再入国できなくなる可能性を懸念したとみられる。7か国出身の社員は少なくとも187人いるとされる。

   ピチャイ氏は「(移民の入国制限は)米国に優秀な人材をもたらすことを阻む可能性がある」と批判。自身もインド出身でスタンフォード大学を卒業。マッキンゼーなどを経てGoogleに入社している。

   Facebookのマーク・ザッカーバーグCEO(32)も自身のFacebookページに、「私たちは避難民と助けを必要とする人々に門戸を開くべきです」と、投稿。自身の祖父母や妻であるプリシラ氏の両親が移民であったことを説明。「米国は移民の国であり、私たちはそれを誇りに思うべきである」と強調した。

   また、米ウォールストリート・ジャーナル紙などによると、Appleのティム・クックCEO(56)は、入国停止の措置について「我々が支持する政策ではない」と批判。そのうえで、「移民なくして今日のアップルは存在しない」と、社員向けのメッセージでコメントした。

   Appleを創業した一人、故スティーブ・ジョブズ氏(56没)の父親もシリア出身で、ジョブズ氏は養子に出された生い立ちをもつ。

米国の移民は、人口全体の約13%

   さらに、TwitterとSquareのジャック・ドーシーCEO(40)が1月28日、「あの大統領令の人道的および経済的影響は不穏なもの。米国は難民と移民から恩恵を受けている」と、懸念を表明したほか、宿泊予約サイトのAirbnbのブライアン・チェスキーCEOは、入国を拒否されて立ち往生している人に滞在先を無料提供することを申し出た。

   Tesla Motorsのイーロン・マスクCEO(45)も、自身のTwitterで「イスラム教の国々からの移民を全面禁止するのはそれらの国々の問題を解決する最善の方法ではない。この政策で悪影響を被る多くの人々は米国の強力なサポーターだ」と、トランプ大統領の政策を批判した。

   Netflixのリード・ヘイスティングス氏やMicrosoftのサティア・ナデラ氏、配車アプリのUberのトラビス・カラニック氏、写真共有サービスの「Flickr」のスチュワート・バターフィールド氏と、多くのIT企業のCEOらがTwitterやFacebookで懸念を表明した。

   みずほ総合研究所・欧米調査部は、トランプ大統領の移民政策によって「移民の減少につながれば、米国経済には大きな打撃になる」と指摘する。

   米国の移民は2014年に約4224万人で、米国の人口全体の13.2%を占めている。このうち、合法移民は3114万人、不法移民は1110万人にのぼる。合法移民は緩やかに増えているが、不法移民は2007年の1129万人をピークにほぼ横ばいをたどっている。

   みずほ総研によると、「これまで議論されてきた移民制度改革は、不法移民に合法滞在への道を拓き、米国の人口を増加させる内容」だった。トランプ大統領は、それを「締め出す」というのだから、優秀な人材が他国へ流れるとともに、しだいに人手不足を引き起こす可能性すら否定できない。

   なかでも、米国のIT企業はインドや中東をはじめ、世界中から優秀な技術者を集め、多くの外国人社員が働き、ビジネスを成り立たせてきたのだから、より深刻な事態に、早期に陥ってしまうかもしれない。IT大手のトップが猛反発するのも無理もないようだ。

   一方、トランプ政権は入国制限について、永住者は適用を猶予すると強調したと、1月30日付の時事通信などが伝えた。あまりの反発の大きさに「軌道修正」したのかもしれない。

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