見所のシーンだったのに、なぜ......お茶の間からそんな落胆の声が漏れ聞こえてきそうだ。
2017年1月29日の「第36回 大阪国際女子マラソン」での一幕、先頭集団の順位が入れ替わる、まさにその時。テレビのスピーカーから流れてきたのは、実況音声ではなく、ロックバンド「THE ALFEE」(以下、「ALFEE」)の曲だった。ツイッターなどでは、少なからぬ視聴者が「歌、いらんだろ」「レース展開が頭に入ってこない」とブーイングを飛ばしていた。
ギターソロ、アウトロまで入ったフルコーラス
ロンドン五輪代表の重友梨佐選手(29)が、5年ぶりの優勝を果たした17年大会。一番の見どころは、何といっても重友選手の驚異的な追い上げだった。重友選手はレース序盤、先頭集団から大きく離れていた。
しかし、粘り強くペースを保ち続け、20キロを過ぎてギアチェンジ。前の選手を次々と抜き去り、29キロ付近で2位の加藤岬選手をとらえた。
勢いを落とさず、トップの堀江美里選手を猛追。35キロ付近で追い越し、そのままゴールインした。多くの視聴者が、重友選手と堀江選手の熾烈な先頭争いを、テレビの前で固唾を飲んで見守っていたはずだ。
そんなシーンに思わぬ「横やり」が入った。重友選手が大阪城公園に入り、2位の加藤選手をとらえるシーンの直前だ。実況音声が途切れ、ALFEEの大会イメージソング『創造への楔(くさび)』が流れ始めたのだ。
ギターソロ、アウトロ(終結部)まで入ったフルコーラス。画面下に歌詞のテロップも表示される中、カメラは約4分間、重友選手が加藤選手に迫る様子を映しだしていた。まるで、マラソンシーンを使った音楽PV(プロモーションビデオ)のような風情すら漂っている。
そして、曲がフェードアウトし、「さぁ、2位が変わろうとしています」と実況音声が戻った瞬間、重友選手が2位に躍り出た。ALFEEの曲が流れたのは、まさにレースの変わり目となる追い上げの場面だったわけだ。
そのためか、ツイッターには
「萎える展開」
「レース展開が全然頭に入ってこなかった」
「歌、いらんだろ」
とブーイングが相次いだ。