肺炎は日本人の死因の第3位で、特に高齢者に非常に多い。原因菌の中でも肺炎球菌が3割を占めるが、その予防ワクチンを接種すると肺炎にかかる人を3割以上減らすことができると、長崎大学熱帯医学研究所のチームが突きとめた。
研究者は、65歳以上の全員がこのワクチンを接種すると、年間で約10万人の肺炎患者を減らすことができると試算している。研究成果は英医学誌「Lancet Infectious Diseases」(電子版)の2017年1月24日号に発表された。
肺炎死亡者の95%は65歳以上の高齢者
長崎大学の発表資料によると、このワクチンは「23価ワクチン」といい、約90種類ある肺炎球菌の中でも特に肺炎を引き起こしやすい23種類の菌に対応する。しかし、これまでワクチンの予防効果は「推計」でしかなく、はっきりとしたデータで解明したのは今回が世界で初めて。
2015年に国内では約12万人が肺炎で死亡し、日本人の死因の第3位で、死者の95%が65歳以上だ。このため、2014年から65歳以上を対象に23価ワクチンの定期接種が始まり、国や自治体が費用の一部を負担している。しかし、予防効果がはっきりしないうえ、自己負担が2~5千円ほどかかるため接種率は約4割にとどまっている。
研究チームは、2011~2014年の3年間に北海道、千葉、高知、長崎の4病院で受診した65歳以上の肺炎患者2036人の検体を採取し、熱帯医学研究所が開発した装置を使って肺炎球菌の種類を分類、ワクチン接種の割合から予防効果を計算した。その結果、23価ワクチンを接種すれば、特に危険な23種類の肺炎球菌による肺炎を33.5%減らすことがわかった。それ以外の肺炎球菌を含めた全肺炎も27.4%を減少できるという。
研究チームは発表資料の中で、「23価ワクチンは高い効果を上げていると考えられます。また、男性よりも女性に、75歳以上よりも75歳未満に効きやすい傾向があることもわかりました。65歳以上の全員が定期予防接種を受けた場合、肺炎にかかる人は年間およそ10万人減らすことができる計算になります」とコメントしている。