岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち NYの共和党支持者が抱く孤独と不安

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「これからどうなるかは、わからない」

   その後、ホワイトハウスの前にオバマ大統領が妻と並んで立ち、トランプ夫妻を迎え、握手と頬ずりを交わし、祝福の言葉を述べる。「意見が対立していても、党派が違っても、こうして敬意を払い、新しい大統領を迎え入れる儀式を行う。この国の素晴らしい伝統だね」とロブがつぶやく。

   記者がトランプに向かって、「移民政策を覆すつもりですか」と質問すると、ロブが声を荒げた。

「就任の祝いの時なのに。そんなことを聞くなんて。トランプにもオバマにも失礼じゃないか」

   トランプが聖書に手を当てて宣誓し終えると、ロブは「う~ん」と満足そうに唸り、演説を終えたときには、祈るようにつぶやいた。「とっても大胆な演説だ。何とか、うまくやり遂げてほしい」

   トランプのことを語りながら、ロブが繰り返し私に言った言葉は、

「It remains to be seen.(これからどうなるかは、わからない)」

だった。トランプを支持しながらも、この国を託すことへの期待と不安が交錯している。

   その夜、ベッツィが街頭から持って帰ってきたフリーペーパー「メトロ」の表紙。下にホワイトハウス、上にはトランプのあの黄色い特徴的な髪型。顔には目も鼻もなく、「?」が1つ大きく描かれていた。

   期待と不安の程度は大きく違っても、それがアメリカの、そして世界の人々の共通の思いだろう。反トランプ派は不安どころか、恐怖と怒りを感じてもいる。

   これまでもこの国が激しい分裂を克服してきた底力を信じ、その発現を祈る気持ちからか。ロブも私も新大統領誕生のあと、就任式でも合唱された愛国歌「アメリカ・ザ・ビューティフル」を何度も口ずさんでいた。(敬称略。随時掲載)


++ 岡田光世プロフィール
岡田光世(おかだ みつよ) 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社 のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓 を描いている。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1 弾から累計35万部を超え、2016年12月にシリーズ第7弾となる「ニューヨークの魔法 の約束」を出版した。著書はほかに「アメリカの 家族」「ニューヨーク日本人教育 事情」(ともに岩波新書)などがある。


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