前に使っていた携帯電話会社から黄色い封筒で料金の支払いを督促する「催告書」が届いた。身に覚えのない金額のため、詐欺業者による架空請求なのではないか、といった相談が掲示板「2ちゃんねる」に出て、複数のまとめサイトがそれを取り上げ騒ぎに発展した。
「催告書」は、不払い金の支払いを迫る最終通知書で、担当弁護士の名前が書かれ、応じない場合は法的手続きが始まるのだが、携帯電話会社の「催告書」「督促状」については、利用者の勘違いから「架空請求」とみなされることが多い。
黄色い封筒、弁護士の名前で直感的に「詐欺」
「前の携帯会社から催告書がきた」というスレッドが「2ちゃんねる」に立ったのは2017年1月21日。相談者は2年契約の途中で別の会社に乗り換えた。解約金が9500円というのは分かっていたが、請求されたのは3万円だった。「催告書」には3人の弁護士の名前と裁判によって強制執行する、という趣旨が書かれている。
「しっかりと会社名は書かれとるんや。だから詐欺業者なのかもわからん」
とし、消費者庁に電話をしたのだが、休日のため電話はつながらなかったという。
この相談に対して、「それ詐欺やろ」「それ払わんでええで」「警察に言え」など、架空請求と信じる人からのアドバイスが相次いだ。
しかし、乗換えをする前月と当月の電話料金が含まれるから3万円になるのは当然、といった説明とともに、
「ソフトバンクやろ?黄色い封筒が2回届いた後に赤い封筒が2回届くで」
「SoftBank 黄色い封筒←検索した結果wwwww」
と、それは正式の催告書という指摘も書き込まれた。
これが複数のまとめサイトに取り上げられたため、どっちなんだという騒ぎに発展した。
携帯電話各社はそれぞれ、形式は違うものの、不払い金の支払いを求める「催告書」や「督促状」を出しているが、なぜかソフトバンクだけ定期的にネット上で騒ぎになる。封筒の色、弁護士の名前、「法的手続き」という文章に驚き、身に覚えのない請求金額を見て、直感的に「架空請求」に結び付ける人がいるからだ。
「架空請求」と信じ込んで、届いた封筒や文書を写真に撮りネット上で公開する人もいるため、封筒に描かれた差出人の電話番号や郵便番号、弁護士の名前など全てがデタラメだと思っている人も多い。
実際にショップに行ったり、本社に電話して相談したりしている人もいるが、「債権」の回収は弁護士など特別なルートを使っているため、現場では分からないことがあり、それがまた「やっぱり架空請求」誤解を生む原因になっている。
2012年4月には孫正義社長を巻き込む同じような騒動があった。
赤い封筒もある
このときは、あるブロガーが孫社長に向け、「架空請求」の可能性があるから警察に通報しようと思っている、と自身のブログで訴えたことがきっかけだった。孫社長はツイッターで、6ヶ月以上の支払遅延者への督促は法律上、弁護士事務所から送られると説明し、封筒を送ったのはソフトバンクが契約している正規の法律事務所であり、個人情報漏れなども無いため安心して弁護士に問い合せして欲しいと訴え、「架空請求」を心配している人たちを納得させた。そして、
「大切なお客様に不要なご心配をおかけした事や不快な想いをさせてしまった事など本当に申し訳なく思います。社長である私の責任です。お詫びします」
と謝罪している。また、16年8月にも「架空請求」騒ぎがツイッター上であり、
「念の為電話番号や弁護士の名前等調べたところ詐欺でした」
などと報告され騒然となった。しかし、ネット上に現物の封筒の写真をアップされていたことで、ほどなくそれがソフトバンクから来た本物の封筒であることが分かったということで収まった。
便乗した架空請求が全くないとは言い切れないものの、利用者からすると、細かい契約の内容を把握していないところに、弁護士名での「催告書」が来ることで驚き、「架空請求」と思い込むケースが多いようだ。
J-CASTニュースが17年1月23日にソフトバンクに問い合わせたところ、同社広報は、
「詳細が分からないため、今回お問い合わせいただいた件と同一かは分かりかねますが、ソフトバンク株式会社として、支払遅延者に対して赤い封筒や黄色い封筒で料金のお支払をお願いする書面をお送りしています」
と回答した。
「催告書」が来たら、「架空請求」と早合点する前に、まず事実関係を確かめる必要がある。