民主党政権時代は「現役のまま出向」
当時、民進党の前身、民主党は野党であったが、ねじれ国会だったので、再就職監視委員会委員の同意人事に反対した。政権をとってからも、委員人事を行わなかった。そのため、再就職監視委員会は組織としてあるが委員不在のため、開店休業だった。野田政権の末期になって、ようやく委員を任命したが、「時、既に遅し」である。
何もやらなかったと言われると、民進党は、「そんなことはない。民主党が政権をとった2010年度の天下り数が激減したが、その後増加した」と言うだろう。
これは、数字のマジックである。つまり、政権を取った民主党は、実態は天下りであるものの、「現役出向」という形で処理したために、見かけ上の数字が減少しただけなのだ。
現役出向というのは、かつては30歳程度の若手職員を民間企業に出向させて、民間感覚を体験するという制度だった。ところが、民主党政権になると、この制度を退職間際の50歳以上の人に拡大した。そして従来の天下リに代わり現職のまま出向させるという、信じがたいことが行われた。これは「再就職」ではなく「出向」なのだから、当面の天下りの数は減るに決まっている。単なる問題の先送りで、実質的には天下りなのだから、その後「出向」が、役所の退職後に「再就職」に切り替わって、結果として天下りが増えてくるのは当然だろう。
筆者から見ると、民進党は、天下り問題を放置したので、安倍政権を批判できないと思う。今の民進党代表の蓮舫氏も行政改革相のポストにいたわけで、そのポストは公務員制度担当でもあるので、責任は免れないはずだ。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ
ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に
「さらば財務省!」(講談社)、「図解ピケティ入門」(あさ出版)、「これが世界と日本経済の真実だ」(悟空出版)など。