新横綱・稀勢の里は、横綱昇進の「口上」で、どんな四字熟語を使うのかに、NHKなど多くのテレビが関心を高めたが、実際には四字熟語は使わなかった。
ここ数年の事例から、「伝統」と認識されることも多い四字熟語入りの昇進口上だが、 一体いつごろから「ブーム」となったのか。
「堅忍不抜」「不惜身命」
大相撲初場所で初優勝を果たした稀勢の里は、17年1月25日、晴れて第72代横綱に正式決定した。日本出身の横綱の誕生は、第65代の貴乃花以来23年ぶりだ。
「横綱の名に恥じぬよう、精進いたします」
同日の横綱推挙伝達式で述べた口上は、四字熟語抜きのシンプルな形。土俵入りの型は「憧れがあった」として雲竜型に決めた。
その雲竜型を締めた三代目若乃花や貴乃花はかつて
「横綱として堅忍不抜(けんにんふばつ)の精神で精進していきます」(三代目若乃花)
「今後も不撓不屈(ふとうふくつ)の精神で、力士として不惜身命(ふしゃくしんみょう)を貫く所存でございます」(貴乃花)
と独特の四字熟語を用いた口上を披露している。
その表現法は以後の横綱にも
「横綱の地位を汚さぬよう、精神一到(せいしんいっとう)を貫き、相撲道に精進いたします」(白鵬)
「横綱の自覚を持って全身全霊で相撲道に精進します」(日馬富士)
と受け継がれ、モンゴル出身の横綱も四字熟語を口上に使っていくようになった。
そのためか、稀勢の里の口上は多くのメディアに注目され、結果として
「四字熟語なし」
が、センセーショナルに報じられた。
しかし、それは「大相撲の伝統」ではなさそうだ。「若貴以前」の2人は、
「横綱の地位を汚さぬよう、稽古に精進します」(曙)
「横綱の名を辱めぬように、全力を尽くして努力精進し、健康に注意しながら心技体の充実に努めます」(旭富士)
といずれも四字熟語抜きだった。
四字熟語入りの口上ブームは「若貴」によって作られたとも言え、稀勢の里はそれを普通に戻しただけともいえる。