2017年1月25日の東京株式市場で、ソフトバンクグループが大幅続伸。一時は前日比297円高の8725円まで急騰し、年初来高値を更新した。約2年4か月ぶりの高値水準で、終値は259円高の8687円だった。
ソフトバンクは、孫正義社長が2016年11月の米大統領選でドナルド・トランプ大統領の当選が決まってすぐにトランプタワーを訪ね、「米国に500億ドル(5兆7000億円)規模を投資して、5万人の新規雇用を創出する」と約束。個人投資家らを驚かせたが、株式市場ではその後も「トランプ銘柄」として勢いを増していた。
日経平均3日ぶり反発 1万9000円台回復
東京株式市場は2017年1月25日、日経平均株価が3日ぶりに大幅に反発。9時すぎに一時、前日比345円19銭高の1万9133円18銭まで上昇したが、買いが一巡するとトランプ大統領の経済政策への不透明感などから、再び1万9000円を割り込む場面もみられた。終値は前日比269円51銭高の1万9057円50銭で引けた。
日経平均株価は1万9000円を回復。業種別では、鉄鋼や機械、非鉄金属が大きく上昇。東証1部の売買高は、19億3434万株、売買代金は2兆2344億円だった。
株価上昇の要因は、1月24日の米株式市場の企業決算が好感されたうえ、トランプ大統領の「米国ファースト」政策で、インフラ投資の拡大や雇用創出への期待が高まり、米ニューヨーク市場のダウ平均株価が上昇した流れを引き継いだ。加えて、25日の東京外国為替市場の円相場が、一時1ドル113円台後半まで円安に振れたこともある。
個人投資家のあいだでは、株価急騰を後押ししたのが「ソフトバンクグループ」との見方が広がっている。ソフトバンク株は16年11月以降、「トランプ銘柄」の象徴として買われてきた経緯があり、米国の株高と連動しやすい素地がある。同社が出資している中国のインターネット通販の最大手、アリババ集団が1月24日に発表した2016年10~12月期決算の営業利益が前年同期比66%増と高い伸びを示したことがソフトバンク株に追い風になっているとみられる。
25日こそ、トヨタ自動車などの自動車株も値上がりしたが、トランプ大統領の相次ぐ「保護主義」発言で下落基調に転じていたことを思えば、ソフトバンク株は「日本批判」など、まったく意に介さないような値動きだ。
これも、「トランプ詣で」の成果なのだろうか――。
「トランプが『ソフトバンクは嫌いだ』とか言ったら半値になる」?
ソフトバンク株の急騰に、インターネットの投資サイトの掲示板などには、
「まさに政商、日米の手数料産業を押さえてるから借金多いうえに安定感もある」
「それでも、有利子負債が14.3兆円もありますけどwww」
「リスク踏んで、うまい投資に踏み切る度量。確かに平均的日本人にない持ち味。よい情報源をもっているとみた」
「トランプに反応しすぎ。トランプが『ソフトバンクは嫌いだ』とか言ったら半値になりそうだよw」
「結局、スプリントも建て直したしな。さすがだわ」
「日本人実業家には真似できないからね、できるのは嫉妬することだけ」
などと、孫正義社長の経営手腕に賛否両論が起きている。
じつは、ソフトバンクの「買い」材料は、もう一つある。同社が2013年に買収した米携帯電話3位のスプリントと、4位のTモバイルUSの合併構想がトランプ大統領の着任で現実味を帯びてきたことだ。
スプリントとTモバイルUSの合併は、オバマ政権時に一たん頓挫した。それがトランプ政権の発足で、米国の通信・放送行政を司る米連邦通信委員会(FCC)の委員長に「規制緩和」派のアジット・パイ氏が、2017年1月23日に指名されたため、「実現の可能性がかなり高まった」とみられている。
米国の情報通信業は、ベライゾン・コミュニケーションズとAT&Tが2強。それらを追いかける態勢が整うとの読みが働いている。