「陀羅尼助丸」。読めるだろうか。答えは「だらにすけがん」。胃腸の不調時に服用する市販薬だ。
奈良県の家庭では常備薬として普及しており、ツイッター上では、腹が痛いときには「マジで効く!」と評判だ。一方で、他の地域ではほとんど知られていない。実は途方もなく長い歴史を持つ薬なのだ。
「外出時に『マイだらに』を持って行く」
陀羅尼助丸は、2017年1月24日放送のバラエティー番組「ちゃちゃ入れマンデー」(関西テレビ)で紹介され、たちまち注目を集めた。薬自体は陀羅尼助といい、飲みやすい丸薬にしたものを陀羅尼助丸と呼ぶ。
番組では「奈良県ではお腹が痛くなると陀羅尼助丸を飲む」という「ご当地の常識」を扱い、腹痛時に飲む薬を聞いた番組の街頭インタビューでは、大阪は「正露丸」という声が多かったのに対し、奈良では「陀羅尼助丸」と即答する人ばかりだった。例えば、こんな声だ。
「昔から陀羅尼助」
「誰が何と言おうと陀羅尼助」
「外出時に『マイだらに』を持って行く」
放送直後のツイッターでも、
「奈良県民なんで、もちろんあります。陀羅尼助丸」
「陀羅尼助丸はマジで効く! 苦いけど、それがたまらん」
「俺も陀羅尼助丸だなぁ」
と、服用している奈良県民のユーザーが続々と声をあげたほか、「うち京都やけど陀羅尼助丸やで」「ワイは兵庫県民だけど陀羅尼助派な模様」といった投稿も見つかった。一方で、「初めて知ったよ」というユーザーも多かった。
一体どんな薬なのか。陀羅尼助を専門に製造販売する藤井利三郎薬房(本社・奈良県吉野郡吉野町)の藤井博文・代表取締役社長は、J-CASTヘルスケアの取材に対し「一言でいえば健胃・整腸薬です」と説明する。第3類医薬品として市販されており、効能・効果は食欲不振(食欲減退)、胃部・腹部膨満感、消化不良、胃弱、食べ過ぎ(過食)、飲み過ぎ(過飲)、胸やけ、もたれ(胃もたれ)、胸つかえ、はきけ(むかつき、胃のむかつき、二日酔い・悪酔いのむかつき、嘔気、悪心)、嘔吐、と幅広い。苦味は強いが、臭いはない。また、その歴史は古い。
「さまざまな薬の走りとされ、陀羅尼助からあらゆる薬が枝分かれしたと言われています。奈良県の吉野山・大峰山地域発祥で、一説によると発祥は1300年前にさかのぼります」
単純に今から1300年前とすると、西暦717年。平城京遷都により奈良時代が始まったのが710年、東大寺の大仏が完成したのが752年だから、いかに昔からあるかが分かる。