トランプ「若き不動産王」はどう変わったのか 30年前に単独インタビューした植山周一郎氏に聞く

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日本も試される時が来た

   ――著書「予言」の中で、日本側の交渉役として最適な人物に、ソフトバンクの孫正義社長を挙げていました。その理由は。

植山 トランプ大統領に対抗できる、唯一の日本人だと思います。語学力をはじめグローバル感覚に優れているだけでなく、外国人の懐に飛び込むパーソナリティーを持っています。トランプ氏が大統領選に勝利した直後の2016年11月17日、安倍首相が訪米して会談しましたが、その後1か月もたたない12月6日に孫社長も直接トランプ氏と会って、米国への約5兆円の投資と5万人の雇用を約束しました。この行動力は見事でした。

   ――では、植山さんがトランプ大統領を相手に交渉をするとしたら、どのような姿勢で臨みますか。

植山 1988年に初めて会った際、彼は「How are you?」(元気かい?)と笑顔で気さくに声をかけてくれました。もちろん礼儀はつくしますが、「ドナルド」「シュウ(植山氏の名前)」とお互いがファーストネームで呼び合える、打ち解けた関係づくりが第一です。そして相手の言い分に耳を傾けつつ、自分の主張もきちんと伝える。欧米では、ビジネス交渉ではお互いに激しく議論をたたかわせますが、いったん合意すればケロっとして仲良く握手します。

 交渉という同じ舞台に立つのですから、お互いがひとりの人間として付き合えるかどうか。「また会いたい」と思ってもらえる、人としての魅力を磨くことが重要だと思います。

 トランプ政権の誕生で、日本も試される時が来たと言えるでしょう。例えば、米軍が日本から撤退する可能性すらゼロとは言い切れなくなりました。これまで想定したことのない事態ですが、むしろ私たちにとっては国防について真剣に考える、おそらく初めての機会になるでしょう。ある意味では日本にとっても、米国頼みから一歩抜け出すことを考えるチャンスが巡って来たといえるのではないでしょうか。

 トランプ大統領の本音はどこにあるのか。私自身、近いうちにインタビューを実現しようと現在動いています。

略歴

植山周一郎(うえやま・しゅういちろう)/一橋大卒、米スタンフォード大S.E.P.修了。英国ソニー販売部長、ソニー本社宣伝部次長等を歴任し「ウォークマン」の世界的ブランディングに貢献。1981年に株式会社植山事務所を設立。国際経営コンサルティング、著作、翻訳、講演、テレビ番組の企画、司会などを手掛ける。サッチャー元英国首相の日本代理人を務め、2013年のサッチャー氏の葬儀には、日本の民間人として唯一英国政府から夫妻で招待された。トランプ大統領とは1988年に日本人で初めてロングインタビューを行ったほか、「交渉の達人 トランプ―若きアメリカ不動産王の構想と決断」(ダイヤモンド社)などの翻訳も手がけた。2016年12月「予言 ドナルド・トランプ大統領で日米関係はこうなる」(SDP)を刊行。これまで47冊の著訳書がある。

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