沖縄県・石垣島の自宅に大麻を隠し持っていたとして、大麻取締法違反(所持)の罪に問われた元女優の高樹沙耶(本名・益戸育江)被告(53)の初公判が2017年1月23日、那覇地裁で開かれた。高樹被告は「わたしが所持しているものではない」として起訴内容を否認。一方で使用については認め、「医療大麻に信頼を置いていた」などと述べた。
大麻取締法では、大麻の「所持」は禁じられているが「使用」は取締の対象外になっている。J-CASTニュースは同法で「使用」が除外されている背景や、予想される高樹被告の量刑などについて、専門家に話を聞いた。
大麻取締法の背景にある歴史的事情
そもそも、なぜ大麻の「使用」は罰せられないのか。「これは、日本における麻文化が背景にあります」――。J-CASTニュースの取材に弁護士法人・響の徳原聖雨弁護士は次のように解説する。
「日本では、大麻草の栽培や利用が古くからおこなわれてきました。例えば七味唐辛子に入っている麻の実であったり、神社のしめ縄の原材料であったり、です。もちろん利用されているのは大麻草の実や茎の部分であり、陶酔作用はありません。このように古くからある大麻草ですので、栽培している人(都道府県知事の許可を得たもの)が空気中に舞った大麻成分を微量ながらも吸引する可能性があります。その時まで『使用』したということで罰してしまうのは妥当ではありません。そこであえて『使用』については罰則から外しています」
高樹被告は初公判において「使用」については認めた。「親知らず」を抜いた後遺症の痛みを和らげるために「月に4~5回使っていた」という。
使用を認めたということは、逆算して考えれば、少なくとも過去の一時点においては「所持」していたと言える。しかし、それだけでは十分な証拠にはなり得ない。徳原弁護士はこう説明する。
「起訴、裁判になると、『所持』していたことを検察側が証明しなくてはなりません。逆算的な考えができるから、というだけでは裁判所は有罪とは認めてくれないのです。そのために、やはり『所持』していたと言える客観的な証拠が必要になります」
「では、仮に本人が『所持』を認めた供述があれば十分なのかというと、そういうわけではありません。法律上、自白のみが唯一の証拠である場合には、有罪とはできないシステムとなっているのです。結局は、客観的な何らかの証拠や、第三者の供述が必要になるということです」
高樹被告は所持していたされる約55グラムの大麻について、ともに起訴された同居人の森山繁成被告(58)のものだと主張。森山被告も「全て私のものだ」と認めており、高樹被告の主張と合う。