【林修の今でしょ!講座】(テレビ朝日系)2017年1月17日放送
「あなたの知識はもう古い!?2017年最新研究で分かった名医の『朝食検定』」
ここ1~2年で、朝食に関する最新研究が次々と発表されている。
番組では、東京女子医科大学・内科学講座の市原淳弘主任教授、池谷医院の池谷敏郎院長が、健康によい朝食の摂(と)り方を伝授した。
大根おろしは根の先端を使って
朝の食卓に並ぶ家庭も多いだろう魚は、他の時間帯よりも朝に食べると、栄養の吸収率が高くなる。
実験で、朝だけ魚油を与えたマウス、夕方だけ魚油を与えたマウスを比較したところ、朝に魚油を与えたマウスの方が体内のEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)が多かった。いずれも、体にとって必要だが体内ではほとんどつくれない「必須脂肪酸」だ。
EPAとDHAは睡眠中に燃焼されるため、朝に摂ると燃えずに体に蓄積されるためと考えられるが、明確な理由は現在も研究中だ。
さらに効率的に栄養を摂るには、焼き魚よりも刺身で食べるとよい。EPAとDHAは熱に弱く、焼くと約20%も減少してしまう。焼く場合はホイル焼きにして、出た汁まで食べると栄養素を逃しづらい。
養殖の魚よりも天然ものの方が価値が高いとされるが、実は栄養が多いのは、安定してよいえさを食べてきた養殖ものだ。1日に必要なEPA、DHAの量は1グラムで、マグロの赤身のすしに換算すると、養殖マグロなら4貫だが、天然マグロでは40貫にもなる。
魚に大根おろしを添える場合は、殺菌作用がある辛味成分「イソチオシアネート」が、葉に近い部分より根の先端に約10倍多く含まれるのでオススメだ。イソチオシアネートは熱に弱く、生のままおろして食べるのがよい。
全粒粉パンを焼くのがベスト
トマトに含まれる栄養素「リコピン」は、朝に摂ると吸収率がよりよくなる。
2016年に発表された研究結果で、朝8時、昼12時、夕方18時にトマトを食べると、8時に食べた時に最もリコピンが吸収された。
さらにトマトは生で食べるよりも加熱した方が効率的にリコピンを摂れる。朝からトマトを調理するのは面倒だという場合は、トマトジュースをレンジで「チン」するだけでもよい。1日に摂りたいリコピンの量はトマト3個分だが、トマトジュースなら1缶でまかなえる。
店でリコピンの多いトマトを選ぶなら、赤色が濃いものを。薄いものよりも3倍含有量が多いといわれている。ちなみに薄い色のトマトは糖度が高く、甘みがある。
パンを食べるなら、全粒粉入りの茶色いパンを焼くとよい。全粒粉パンは食物繊維が豊富で、白いパンよりも糖の吸収がゆるやかになる。糖がゆっくり吸収されると長時間脳にブドウ糖が送り続けられ、脳の働きが活発になる。焼くとデンプンが吸収しにくい形に変化しより効果的だ。
忙しい時はバナナが朝食代わりになることもあるだろうが、黄色いものよりも熟した黒いものの方が、風邪予防により期待できる。マウスを使った実験で、黒いバナナは免疫活性効果が約8倍という結果が出た。
朝食後に緑茶を飲む場合は、ぬるめのお湯よりも沸騰するくらいのお湯でいれた方が、殺菌作用があるカテキンが抽出されやすくなる。
ダイエットには「具沢山の温スープ」
朝食を抜くよりも食べた方が太らないと言われるが、これは1日の食事量が減るからだ。朝食を食べないと体はエネルギーを欲し、脳がたくさん食べるよう命令を出し、ドカ食いにつながってしまう。
米ミズーリ大学の研究によると、卵、納豆、シラス、チーズ、ヨーグルトなど高タンパクのものを朝に食べると、脳の食欲に関する活動が低下して空腹を感じにくくなり、ダイエット効果が期待できる。
朝食を抜くと、太るだけでなく、冷え症のリスクも高まる。東京有明医療大学の研究では、朝食を食べる回数が週に3日以下の人は、週4日以上朝食を食べる人よりも冷えを感じる割合が2倍以上になった。
朝は臓器を動かすためにエネルギーが必要だが、朝食を食べないと体に蓄えたエネルギーを使う。人間の体は、エネルギーが減っていくことを冷えとして感じてしまう。
冷え性対策になる朝食は「具沢山の温かいスープ」だ。具が多く入っていると噛む回数が増え、口の筋肉を使うので熱が発生する。
さらに国立がん研究センターなどが2016年に発表した研究結果によると、朝食を抜くと脳出血のリスクも36%高くなる。
高血圧の人が脳出血になりやすいが、朝食を食べないと、空腹のストレスから血圧が上がる傾向がある。