大相撲・初場所(東京・両国国技館)で悲願の初優勝を果たし、「横綱」昇進を手に入れた大関・稀勢の里関(30)。
一夜明けた2017年1月23日付の一般紙朝刊やスポーツ紙などは、19年ぶりの「日本出身」横綱の誕生に大いに沸いているが、初優勝での昇進に、「甘いのではないか」という見方も消えていない。
23日、横綱審議委員会が横綱に推薦
2017年1月21日の14日目に西前頭13枚目の逸ノ城を寄り切りに破り初優勝を決め、22日の千秋楽では横綱・白鵬をすくい投げで撃破し、この時点で横綱昇進をほぼ確実にした稀勢の里。2011年九州場所後の大関昇進から31場所目の初優勝。また、新入幕から73場所の横綱昇進は、昭和以降で最も遅い記録。悲願の初優勝と、ようやくつかんだ横綱昇進に、賜杯を手に涙した稀勢の里の姿は印象的で、多くの相撲ファンが喜んでいることは間違いない。
2017年1月23日付の朝日新聞や毎日新聞は1面で、「稀勢の里 横綱へ」と称え、読売新聞は「横綱・稀勢の里 23日諮問へ... 安定感重視」と、稀勢の里の横綱昇進に太鼓判。産経新聞も、1998年夏場所後に昇進した3代目若乃花以来「19年ぶり日本出身力士」の誕生と報じた。
日本相撲協会(八角理事長、元横綱・北勝海)は千秋楽のあと、審判部から稀勢の里の横綱昇進を審議する臨時理事会の開催を要請され、これを受諾。23日に開かれた横綱審議委員会で、横綱に推薦することが認められた。25日の臨時理事会で正式決定の運びとなる。
ただ、誰もが「納得」の横綱昇進かといえば、そうでもない。1月23日付の朝日新聞は2面で「稀勢に綱 勇む協会」の見出しで、昇進の「プロセスに甘さ」と指摘した。
稀勢の里の横綱昇進は、「2016年の成績が安定していた」ことが高く評価され、推された。16年の稀勢の里は、9勝6敗の初場所を除けば、春場所が13勝2敗、夏場所13勝2敗、名古屋場所12勝3敗、秋場所10勝5敗、九州場所は12勝3敗と、すべて2ケタの勝ち星。69勝(21敗)は年間最多勝だった。
一方、横綱審議委員会の内規には、横綱昇進の「条件」に2場所連続で「優勝または優勝に準ずる成績」とあるが、これまでも必ずしも厳密には守られていない。稀勢の里の2016年の成績が「優勝に準ずる成績」に相当するのかどうかを、どう考えるかということだ。
稀勢の里は初優勝したものの、初場所の千秋楽までにあげた13勝に休場した2横綱からの白星がなかったこと。加えて、14日目に優勝を決めた時点で、「千秋楽の白鵬戦の前に『総意』としてGOサインを出した」ことで、「(白鵬に)勝利したものの、勝たなければ、横綱に勝たずに昇進するところだった」と、朝日新聞は辛口に評価した。