今場所は限りなく数少ないチャンスだった
もちろん稀勢の里に責任があるわけではない。彼個人のことを思えば、耐えに耐えて初めての賜杯を手にした努力は後輩たちに大きな励みを与える。優勝は横綱昇進とはそういう意味でも価値あるものだ。
稀勢の里は1986年7月3日生まれだから現在30歳の真ん中。名古屋場所は31歳になる。現3横綱とほぼ同じとなる。
厳しいようだが、年齢と今後を考えるとこの場所は限りなく数少ないチャンスだったといっていいだろう。
大きな理由の一つに生きのいい中堅、若手が上位にいる。11勝4敗で敢闘賞の高安、同じ星で技能賞の御嶽海らである。7勝8敗で負け越した正代もホープだ。彼らの勢いを止めるのは容易なことではない。
「これからも稽古をして強くなりたい」
稀勢の里は謙虚に語った。来場所からを見据えた言葉で、予想される注目度から新たなプレッシャーと闘うことになる。日本人横綱vsモンゴル勢横綱の構図は話題満載。3月の大阪・春場所は連日の満員御礼だろう。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)