大統領の椅子に座るドナルド・トランプ氏。その机の上には、2つのボタンが。1つは「ツイート」。そしてもう1つは――「核(nuclear)」。選挙中の2016年7月、ニューヨーク・タイムズ(ウェブ版)に掲載された風刺画の一コマだ。
2017年1月20日(現地時間)、トランプ氏は正式に米大統領に就任した。同時に、いわゆる「核のボタン」も引き継いだことになる。
アメリカは核能力を「大いに強化し、拡大しなければならない」
いわゆる「核のボタン」は風刺画とは違い、御付きの軍人が肌身離さず携帯している黒いカバン、通称「フットボール」に収められている。大統領が特別なコードを使ってこれを起動すると、世界中どこからでも、軍に指令が送られ、核ミサイルが発射される。2016年のオバマ前大統領の広島訪問時にも、このカバンが持ち込まれたと報じられている。
そのオバマ前大統領と違い、トランプ新大統領は、「核」に対して肯定的な発言を繰り返している。16年12月22日には、「核について世界がまっとうな感覚を持てるまで」という条件付きながら、アメリカは核能力を「大いに強化し、拡大しなければならない」とまで明言している。
今回、20日の就任演説では、「イスラム過激派のテロリズムに対し、文明社会で結束し、この地球上から完全に根絶する」と発言し、以前からの強硬な姿勢を堅持する構えをみせた。16年3月には、米テレビ番組のインタビューで、過激派組織「イスラム国(IS)」について、核攻撃も含むあらゆる可能性を「除外しない」と述べていた。