キヤノングループが2017年2月から提供を開始する、クラウド型テレワーク支援サービス「テレワークサポーター」が、インターネットで話題だ。
在宅勤務の社員を管理するシステムは少なくないが、これまではパソコンの画面をクリックすることで勤務時間を記録する仕組みが多かった。そのため、本人がきちんと勤務しているのかどうかがわかりづらかったが、それを「カメラで、本人と認識できるのが特徴」という。
カメラ映像から在宅勤務の状況を自動検出する
社員のワークライフバランスの向上や、育児や介護と仕事の両立をやりやすくするなど、多様な働き方を促進するとして、最近は職場に通勤せずに自宅で働く在宅勤務(テレワーク)が注目を集めている。
政府も、2020年にテレワークの導入企業を2012年度と比べて3倍、週1日以上在宅勤務する社員(テレワーカー)をすべての労働者の10%以上とすることを目標に掲げており、テレワークを社員に認める企業は増える傾向にある。
その半面、企業にしてみれば、社員の勤務実態の把握が煩雑になることや、業務効率の低下や情報漏えいなどが懸念され、こうした悩みを解決する工夫が求められている。
キヤノングループのシステムインテグレーション(SI)、ソフトウェア開発・販売を手がけるキヤノンITソリューションズ(ITS)は、そんな企業のテレワークへの悩みを解決しようと、2017年2月から、クラウド型テレワーク支援サービス「テレワークサポーター」を提供する。
カメラ映像から在宅勤務の状況を自動検出することが可能で、顔認証技術によって本人の在席や離席を自動判別して勤務状況に反映する。勤務状況をグラフでビジュアル化し、勤務時間を日別・週別・月別に自動集計することもできる。また、本人以外の「なりすまし」や「覗き込み」を自動検出して勤務管理者へ通報すると同時に、画面をブラックアウトさせて情報流出を阻止する。
さらに、不正アクセスなどが発生した場合には、不正利用者のカメラ画像とスクリーンショットを同時に記録。通常時も一定間隔でカメラ画像を記録することで勤務状況の証跡を残せるようにした。
在宅勤務の実態の「見える化」とセキュリティという企業側の課題を解決すると同時に、社員側には勤務状況の連絡や報告作業などのわずらわしい業務から解放され、効率よく業務に集中できるようになるとしている。
キヤノンITSによると、すでに2社が導入を決めているほか、サテライトオフィスなどの遠隔地での勤務でも利用できるという。
「ムービーで記録しているわけではありません」
そんなキヤノンITSの「テレワークサポーター」について、2017年1月17日付の日経産業新聞が「在宅勤務者をカメラで監視」という見出しで記事を掲載すると、インターネットのまとめサイトの掲示板などがすぐに反応。システムに「カメラ」を搭載したことで、「勤務時間や態度が常に監視されている」と受けとめた人が多かったようで、
「出社してたほうがマシやなw」
「自宅にいてもこれじゃあ子育てできねえじゃんw」
「日本人はこういうの好きだよな。成果よりも時間で机に座っているほうが偉いみたいなw」
「成果で見れないんだろうな。管理者が未熟なんだよ」
といった声が多くあがった。
こうした声に、キヤノンITSは「なにか、誤解があるようです。導入を決めた企業様の評価も高いのですが...」と、首を傾げる。
誤解を招いたのは、おそらく社員がパソコンに向かって働いているところを、カメラが常時写し出して、そのようすを管理者が監視していると思われた点だろう。
システムは、在宅勤務の社員が複数の写真を登録。本人がパソコンで作業しているときにはカメラは作動しない。ただ、管理者側がインターバルの時間を決めて勤務状況を確認することはできる。
カメラが作動するときは、たとえば、本人以外の人がパソコンで作業しようとしたとき。カメラがパソコンの前に座った人の写真を撮って静止画で記録するほか、同時にエラーメッセージが管理者に発信する。「パソコンを覗き込んだり、操作したりした場合には、その人の写真を撮影したうえで、画面のキャプチャーをとって管理者に発信します」と説明。情報漏えい防止機能も整えた。キヤノンITSは、「ムービーで記録しているわけではありません」と断言する。
キヤノンITSは、「在宅勤務が広がることで、働ける人が増えることが期待されています。テレワークは雇用を生み出す働き方ですし、このシステムはテレワークを推進するために、開発。システム化に漕ぎつけたものです」と、自信をみせている。