半導体事業が抜けても、「まだ5兆円の売り上げがあります」
一方、東芝が出資を要請している「お相手」と目される米Western Digitalは、ハードディスク駆動装置(HDD)の世界最大手。東芝とはNAND型フラッシュメモリーで提携しており、東芝の主力拠点である三重県・四日市工場は、東芝とWestern Digitalが15年にわたり共同運営している。この四日市工場を、分社化する。
東芝の「事業の切り売り」は、2015年の不適切会計の発覚がきっかけ。インフラ事業や映像事業、パソコン事業、半導体事業での利益の水増しや損失の先送り、さらには2006年に買収した米ウエスチングハウスの巨額損失を隠ぺいするため、減損処理の方法を変更するなどの不正操作によって、2008年4月から14年12月までの6年9か月間にわたり利益を過大に計上した。
東芝は経営再建のため、2015年10月28日に画像(CMOSイメージ)センサー事業と白色LED事業からの撤退を発表。画像センサーの生産拠点、大分工場(大分市)の生産ラインをソニーに200億円で売却したほか、16年3月には東芝の医療機器事業が母体の主要子会社、東芝メディカルシステムズをキヤノンへ6655億円で、また白物家電の東芝ライフスタイルを中国の美的集団に537億円で売却。売り上げの一翼を担ってきはずの事業が、次から次へと売却された。そして、とうとう「虎の子」で、成長著しい半導体事業に手をつける。
半導体事業の分社化によって、東芝は約1兆円の売り上げが、「一時的」とはいえ、剥がれることになる。ますます縮小均衡に陥っていくようにみえるが、原子力発電をはじめとしたエネルギー事業と公共インフラ事業のほか、売り上げの落ち込みをカバーできる事業があるのだろうか――。
2017年1月18日のJ‐CASTニュースの取材に、東芝は「(半導体事業が抜けても)売り上げでまだ5兆円あります。(原発事業や公共インフラ事業以外にも)目立たないですが、さまざまな事業や規模はあります」と話した。
1月19日の東芝の株価は一時、前日比76円40銭安の212円まで値下がり、終値は242円30銭で引けた。475円の年初来高値を付けた2016年12月15日から、わずか20営業日余で232円70銭と、ほぼ半減している。