結局、正社員の賃金を下げる結果に? 「同一労働同一賃金」で起きるコト

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「かえって格差が固定化する」懸念も

   指針を示した同会議で、安倍晋三首相は、「正規労働者と非正規労働者の間の不合理な待遇差を認めないが、わが国の労働慣行には十分に留意したものとなった」と胸を張った。自画自賛は割り引いても、「同一労働同一賃金」という大きな方向に異論は少なそうだが、簡単に実現するものでもない。

   例えば、根本的な問題として、欧州では、企業横断的な労組があり、職務を決めて採用し、その難易度(習熟度)に応じた「職務給」が原則なのに対し、日本は年功序列の終身雇用という日本型雇用が多く、労組も企業別で、正社員の賃金は、長期雇用を前提に、能力や経験を評価した「職能給」が中心という根本的な違いがある。正社員と非正規間の「同一」の評価が難しいと指摘される。逆に、正社員・非正規の待遇に格差をつける理由を説明しやすくするため、「正社員と非正規の仕事や役割をはっきり分ける『職務分離』が広がり、かえって格差が固定化するのでは」(全国紙社会部デスク)といった懸念も出る。

   そもそも、単純に非正規の待遇を改善すれば人件費全体が膨らむことに、企業側の警戒感が強い。「非正規労働者の処遇改善を生産性向上につなげ、収益増を図る発想の転換が必要」(読売2016年12月28日社説)というのが大きな目標で、中長期的に「重要なのは非正規で働く人たちが仕事に必要な技能を高め、貢献度を上げられるようにすること」(日経12月22日社説)なのは当然としても、現実には「解釈や運用の仕方によっては正社員の賃金を引き下げる理由にされるリスクもある」(毎日12月27日社説)という指摘は多い。

   わずか十数ページの指針案で明確に判断できる事例は限られ、労使が判断に迷うことが予想される。最終的に裁判の判例の積み重ねにゆだねることになるが、「労働者側が法廷で『格差は不合理』と立証するのは難しい」(労組関係者)こともあって、現時点で、格差是正がどこまで、どんなテンポで進むかは不透明だ。

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