東京・上野動物園のジャイアントパンダに発情の兆候が見られるとの報道に、中華レストランの「東天紅」や老舗のフランス料理店の「精養軒」の株価が急騰している。
上野動物園が繁殖に向けた準備を開始したと伝えられたことで、近い将来、パンダの赤ちゃん目当ての観光客が増加し、店の売り上げが増加するとの思惑買いを誘ったようだ。
パンダの赤ちゃん誕生に期待高まる
東京・上野動物園は2017年1月16日、ジャイアントパンダのリーリー(オス11歳)とシンシン(メス11歳)の繁殖に向けて本格的な準備を開始したと発表した。ジャイアントパンダの繁殖期は2~5月で、期間中にメスの妊娠の可能性が高まるのは数日間だけとされる。現在2頭は別々のスペースにいるが、今後、発情の様子を見ながら交配のため2頭を同居させる。
上野動物園では、展示場所近くにフェンスを設け、17日以降は見学できるエリアを、展示場所とフェンスの間の「観覧通路」に制限することにしたほか、今後状況を見ながら展示を中止する可能性があるという。
リーリーとシンシンの間には、2012年に子どもが生まれたものの、6日後に死んでしまったことがあり、赤ちゃんの誕生に改めて期待が高まっている。
そんな期待感を背景に、株式市場では「パンダ銘柄」に早くも注目が集まっている。上野動物園に近い不忍池のほとりに本店を構える中華レストランの「東天紅」や、上野の社交の場として1876(明治9)年に開業(創業は1872年、東京・築地の「西洋館ホテル」)したフランス料理店の草分け、「精養軒」がそれ。いずれも、株価が急騰している。
パンダに赤ちゃんが誕生すれば上野動物園への来場者が増え、来店客が増えて売り上げが上がるとの思惑が広がったためとみられる。
東証第1部に上場する東天紅の株価は2017年1月17日、朝から買いが殺到。一時、前日比34円高の192円まで上昇し、年初来高値を付けた。終値は10円高の168円だった。 18日は、8円安の160円で引けた。
東天紅が1月12日に発表した2017年2月期第3四半期(16年3~11月末)の決算によると、売上高は前年同期比7.5%増の47億6100万円。営業利益は2億4000万円の赤字だったが、前年同期と比べて赤字幅は縮小している。
一方、JASDAQ市場に上場する精養軒は1月17日、前日比24円高の732円で引けた。18日は2日続伸。終値は、9円高の741円だった。
精養軒が16年12月9日に発表した17年1月期第3四半期(16年2~10月末)の決算によると、売上高は前年同期比2.4%増の22億3400万円。営業利益は、4300万円の赤字だった。ただ、赤字幅は縮まっている。
「お馴染みパンダ銘柄だな。やっぱり騒ぎだしたかw」
東天紅や精養軒の株価の動きに、ツイッターやインターネットの投資サイトの掲示板には、
「パンダ関連銘柄だったのか・・・#東天紅」
「発情するだけで騒がれるパンダも気の毒な気がする」
「お馴染みパンダ銘柄だな。やっぱり騒ぎだしたかw」
「ご祝儀みたいなもんだからな」
といった声が寄せられている。
とはいえ、株にはリスクが付きもの。2012年7月には、上野動物園のジャイアントパンダに赤ちゃんが生まれたことで、「パンダ銘柄」は今回と同じように一時急騰したが、その赤ちゃんが肺炎でなくなると、株価も暴落。当時、100億円とされていた「赤ちゃんパンダの経済効果」(関西大学大学院の宮本勝浩教授が、動物園の入場料や、ぬいぐるみやグッズの販売、百貨店・レストランの利用、観光客の宿泊費や交通費などから試算)も失った。