「車いすなのにベビーカーと間違われて、必要な介助が受けられない」。ツイッターに投稿されて話題になっているのが子ども用の「バギー型車いす」だ。大人用の一般的な車いすと比べ、車輪が小さく、背もたれが高くなっているものが多い。
あくまでも障害児が乗るための「車いす」で、機能的には工夫された面が多いのだが、見た目がベビーカーに似ていることが裏目に出ている。
機能充実だがベビーカーより重い
ツイートは2017年1月10日、娘が乗っているという子ども用車いすの写真とともに投稿された。写真を見ると、大人用の車いすに比べて横幅が狭く、背もたれが高い。頭上に被せられる日よけがついており、車輪は手のひらより一回り大きい程度だ。ツイートによると、リクライニングや、持ち手の位置の上下動もできるという。
投稿者と、別のユーザーたちとがやり取りする中で、度々言及されたのは、「見た目がベビーカーに似ていて、間違われやすい」点だ。確かにベビーカーに見え、外見の違いについては投稿者も「見慣れるとわかるんですよね」と残念そうだ。
ベビーカーや大人用車いすとの違いについて、J-CASTヘルスケアはバギー型車いすメーカーの「きさく工房」(本社・福岡県宇美町)に取材した。同社担当者はこう語った。
「障害のためにベビーカーでは姿勢が保てない子どもでもうまく座れるよう、体格に合わせ、背もたれのたわみや、胸側を押さえるベルトなどを調節できます。キャスターの性能も高く、ベビーカーより取り回しが良くなっております」
乗せたり降ろしたりしやすいよう、座面の高さを調節できるタイプや、リクライニングの角度が水平近くまで変えられるタイプもある。重量は、大人用車いすよりは軽いが、ベビーカーより重い。障害によっては人工呼吸器や吸引器が必要な子どももおり、そうした医療器具を乗せられるスペースも確保されている。また、車いすなので、購入に公的な補助金が出る。
しかし、こうも語った。
「外見はベビーカーと共通する点が多いのは間違いなく、ここさえ見れば誰でも見分けがつく、というポイントはちょっと無いかもしれません」
足を乗せるフットレストがあるのが特徴的ではないか、と聞くと、こう答えた。
「ベビーカーでも、海外製品などではついているタイプがありますし、一概には言えないかと思います」
電車の乗り降りでスロープを出してもらえない
同社のバギー型子ども用車いすは、乳幼児に限らず使われる。きさく工房では、身長90~110センチ用のSサイズから、145~165センチ用のLLサイズまでそろえている。そのため「LLになるとベビーカーよりも明らかに大きいです」というものの「Sだとサイズの面でもベビーカーと同じくらいです」。それでも「見慣れている人には一見して分かるはずです」とも加えていた。
そんなバギー型子ども用車いすだが、認知度は決して高くない。前出のツイート投稿者は、ベビーカーに見られるため「障害者として認識されず、必要な介助が受けられない場合がある」と指摘している。
担当者に改めてこの点を聞くと、こう答えた。
「電車の乗り降りでスロープを出してもらえない時がある、といった話は最近よく耳にします」
他にも、ツイートの体験談では、重量が10キロ以上あるため、階段などで一時的に折り畳んで持ち上げるといったことが難しく、周囲の介助が必要になるケースが多いという声があった。
こうした状況に対し、認知度向上を図っている団体もある。一般社団法人「mina family」は、外見だけで「子ども用車いす」だと判別できるよう、車体に取り付ける「こども車いすマーク」を2016年6月に作成し、普及に努めている。公式サイトによると、啓発のためにポスターも作成し、公共施設などでの掲示を進めている。