住宅を断熱工事して冬でも暖かくすると、血圧が下がって健康にいいことが、国土交通省の調査チームが2017年1月13日に発表した報告で明らかになった。
室内の気温が低くなるほど血圧が高くなり、高齢者ほど血圧の変動幅が大きくなる傾向が確認され、同省では住宅の断熱改修工事を呼びかけている。
世界中どこでも冬は夏より死亡率が増加
この報告は、同省が2014年から進めている「健康・省エネのスマートウェルネス住宅推進事業」の一環として行なった「住宅の断熱改修が健康に与える影響調査」の中間報告。村上周三・東京大学名誉教授(環境工学)らの調査委員会が研究にあたった。
同省の発表資料によると、世界中のどの国・地域でも冬は夏より死亡率が増加する。欧州の冬の死亡増加率を見ると、フィンランドなどの寒冷な国では10%前後だが、スペイン、ポルトガルなどの温暖な国では22~28%に急増する(2010年調査)。日本でも北海道や青森県は10~11%だが、鹿児島、愛媛、静岡県などの温暖なところは21~22%と高くなる。実はもっと高いのが栃木県の25%、次に茨城県の24%だが、これは北関東特有の「冬の空っ風」をまともに受けるためとみられる(2014年調査)。
寒冷地と温暖地にこれだけ死亡率に差があるのは、フィンランドや北海道では、断熱性能のよい住宅が普及し、冬でも室内の気温が暖かく保たれているが、温暖な国や県では断熱住宅が少ないため、冬の室内が寒くなるためだ。
高齢になるほど室温が下がると血圧が高くなる
同省の調査チームは、住宅の改修を行なう予定の1701人を対象に、住宅の室温の変化が血圧に与える影響を調べた。すると、朝起きた時の室温が低いほど、血圧が高くなる傾向がみられた。室温がふだんより10度低くなると、最高血圧が7.3 mmHgも高くなった。しかも、高齢になるほど室温の変化が血圧に影響を与える度合いが高くなった。たとえば、ふだんの気温より5度低くなった場合、20代では血圧が2.8mmHgしか上がらなかった、60代では9.0 mmHg、70代では10.2 mmHg、80代では12.1 mmHgも高くなった。
次に、実際に住宅の工事をすませた165人を対象に、さらに詳しく改修後の室温の変化が血圧に与える影響を調べた。その結果、改修後に室温が平均で3.3度上昇し、血圧の平均も1.4 mmHg低くなった。気温が高くなるほど血圧が低くなる傾向がみられ、10度以上高くなった人では、血圧が4.5mmHg低くなった。
調査チームは、中間報告の中で「高齢な人ほど室内の気温を暖かく保つことに気をつけてほしい」と呼びかけている。