南京大虐殺を否定する内容の書籍を日本の「アパホテル」の客室に置いていたとして、中国のネット上で激しい批判にさらされているアパグループが2017年1月17日夕、「書籍を客室から撤去することは考えておりません」などとする見解を発表した。
問題となったのは、アパグループ代表の元谷外志雄(もとや・としお)氏(73)が執筆した『理論近現代史学』というシリーズ本。文中には「南京虐殺事件が中国側のでっちあげであり、存在しなかったことは明らか」といった主張が綴られていた。
中国ネット「アパホテルだけは使わない」
騒動のきっかけは、中国人男性と米国人女性のカップルが1月15日に中国のSNS「微博(ウェイボー)」へ投稿した1本の動画だった。
日本旅行でアパホテルに宿泊したという2人は、客室に「南京大虐殺を否定する内容を含む書籍」が置かれていたとして、その内容を英語で読み上げる中国語字幕付きの動画を投稿。動画の冒頭では、
「この事実を知った上で、アパホテルに宿泊するかどうかを決めるべきだ」
などと呼びかける場面もあった。この動画は1月17日18時時点で7800万回以上再生され、3万件以上のコメントが付いている。
こうした動画が拡散されたことで、中国人ネットユーザーからは批判が噴出。ウェイボーには、
「日本に旅行に入った際には、アパホテルだけは使わない」
「今後、アパホテルは使わない。友人にも知らせる」
「(アパホテルが)中国に進出しないことを祈る」
といった怒りの書き込みが数多く寄せられている(コメントはいずれも編集部訳)。
こうした状況は日本のネットメディアでも報じられ、日本のツイッターでもアパホテルに対しての批判が相次ぐなど、騒動は海を越えて拡大していた。
「本当の歴史を知ることを目的としたもの」
そんな中、アパホテルを運営するアパグループは1月17日夕、社としての見解をまとめた発表文を公式サイト上で公開。書籍の内容については「著者(=元谷代表)が数多くの資料等を解析し、理論的に導き出した見解に基づいて書かれたものです」とした上で、
「国によって歴史認識や歴史教育が異なることは認識していますが、本書籍は特定の国や国民を批判することを目的としたものではなく、あくまで事実に基づいて本当の歴史を知ることを目的としたものです」
と説明。その上で、
「異なる立場の方から批判されたことを以って、本書籍を客室から撤去することは考えておりません。日本には言論の自由が保証されており、一方的な圧力によって主張を撤回するようなことは許されてはならないと考えます」
と主張した。
なお、見解文の末尾には、元谷代表が執筆した『理論近現代史学』の中で、南京大虐殺の存在を否定する記述を1300字以上にわたって引用。その上で、見解文の中では、
「事実に基づいて本書籍の記載内容の誤りをご指摘いただけるのであれば、参考にさせていただきたいと考えています」
と呼び掛けていた。