韓国・釜山の日本総領事館前など韓国各地に設置が進んでいる慰安婦をモチーフにした少女像の問題は、領土問題も加わって泥沼化しそうだ。竹島( 韓国名・独島)にも慰安婦像を設置する計画が表面化したことが原因だ。当然のことながら日本政府は、竹島は「我が国固有の領土」で、設置は「受け入れられない」と批判している。
韓国政府は慰安婦像については抑制的、消極的な対応を続けてきたが、領土問題が絡んだ今回は「つまらない主張を直ちに放棄すべき」と反発を強めている。
韓国の地方議員団体が募金活動開始を発表
聯合ニュースが2017年1月16日に伝えたところによると、韓国・京畿道(キョンギド)議会の議員34人でつくる団体「独島愛・国土愛の会」が同日、竹島への慰安婦像設置を目指して募金活動を始めたと発表した。目標額は7000万ウォン(約670万円)。17年上半期に京畿道議会に1体、ソウルの日本大使館前に慰安婦像が設置されて丸6年になる17年12月14日をめどに、竹島に1体を設置したい考え。
竹島は韓国で「天然保護区域」に指定されており、現状の変更には文化財庁の許可が必要。許可が下りるかどうかも焦点になりそうだ。
岸田文雄外相は1月17日朝、
「竹島は、そもそも国際法上も歴史的にも我が国固有の領土である、これが我が国の立場。この立場に照らしても、ご指摘の点は受け入れられない、これが我が国の立場」
と述べ、竹島への慰安婦像設置を批判した。
慰安婦像問題が領土問題に「飛び火」した形で、韓国側は一転して反発を強めている。聯合ニュースによると、韓国外務省の鄭炳元(チョン・ビョンウォン)東北アジア局長は1月17日午後、在韓日本大使館の総括公使を呼んで抗議。その席で、韓国側は
「日本政府は、独島に対するつまらない主張を中断し、歴史を正しく直視しながら、韓日関係の新たな未来を開いていくことができるように積極的に努力していかなければならない」
などと主張したという。
韓国の外務省報道官「報道見て知った」
外務省の趙俊赫(チョ・ジュンヒョク)報道官は17日の記者会見で、
「日本政府が再び不当な主張をしたことについて嘆かざるを得ない」
などと日本側の領有権主張を非難。竹島での慰安婦像設置計画については「報道を見て知った」として、「関連動向について確認したい」と述べるにとどめ、日韓合意については
「韓日両国政府がすべて誠実に、着実に履行しなければならない合意」
と、従来の立場を維持した。
釜山の日本領事館前に慰安婦像が設置されたことを受け、日本政府は1月9日に長嶺安政駐韓大使、森本康敬釜山総領事を一時帰国させている。政府は近く2人を韓国に帰任させる見通しだが、今回の竹島への慰安婦像設置に向けた動きが日本政府の判断に影響する可能性もある。趙報道官はこの点について、
「日本政府が判断して決定すること」
と述べるにとどめた。
菅義偉官房長官は1月17日夕方の定例会見で
「竹島の領有権に関する我が国の立場照らしても受け入れられず、きわめて遺憾。韓国側に対しては、報道を受け、直ちに強く抗議を行った。それと同時に、日韓、お互いの国が慰安婦問題については合意をしているわけだから、お互いのその合意に基づいてしっかり対応していく、そのことがきわめて重要」
と述べ、改めて竹島の慰安婦像設置計画を非難し、日韓合意の履行を求めた。