慰安婦問題を「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認」したとする2015年末の日韓合意を結んだ韓国側の当事者にあたる尹炳世(ユン・ビョンセ)外相が「袋だたき」状態だ。
尹氏は国会で、釜山の日本総領事館前に設置された慰安婦をモチーフにした少女像を念頭に、外交公館の前に施設や造形物が設置されることは「望ましくない」と発言。これに対して野党からは「日本の主張をコピーしたように話している。どこの国の外相なのか」などと辞任要求の声があがっている。
共同通信「慰安婦像撤去を求める日本側の主張に理解を示した」
尹氏は2017年1月13日に韓国国会で行われた外交統一委員会で、一般論として
「国際社会では、外交公館や領事公館前に、あらゆる施設や造形物を設置することについて、望ましくないと考えているのが一般的な立場」
と述べた。釜山の慰安婦像については
「関連当事者と可能な解決策を見つけられるように努力する」
「政府が少女像設置を反対しているのではない。場所の問題については、知恵を集める必要がある」
などと述べるにとどめ、直接的な「撤去すべき」といった表現は避けた。日韓合意が破棄された場合は「国益に深刻な影響を与えるおそれがある」とした。
この尹氏の発言を、共同通信は「撤去を求める日本側の主張に理解を示した」と報じた。日本政府は釜山の慰安婦像設置を受けた対抗措置として、1月9日に長嶺安政駐韓大使、森本康敬釜山総領事を一時帰国させている。政府は近く2人を韓国に帰任させるとの見方もあり、共同通信は、日本政府が「こうした韓国側の姿勢も考慮したとみられる」と指摘している。
韓国の野党は、尹氏の発言が日本側を利したとして反発を強めている。東亜日報によると、最大野党「共に民主党」スポークスマンは
「『少女像に反対するものではない』と言うが、事実上少女像設置に反対したことに変わりない」
「国益と国民の権益を守るべき外相が日本の主張をコピーしたように話している。尹炳世外相は果たしてどの国の外相なのか問わざるを得ない」
などと批判。ハンギョレ新聞によると、同党のカン・チャンイル議員も
「日本外相が書いた報告書だと思ったら、大韓民国・尹炳世外相のものだった」
と皮肉り、
「加害者は日本なのに、『(合意が)破棄されたら韓国の国益に影響を及ぼす』というのはどういうことなのか」
と尹氏に詰め寄った。釜山の総領事館前に慰安婦像を設置した団体は、
「日本の立場を代弁している尹長官は職から退け」
と主張した。