豊洲市場(東京・江東区)の土壌汚染対策をめぐり、東京都が実施している地下水モニタリング調査の最終結果が2017年1月14日午後、都が開いた外部有識者による「専門家会議」で報告された。
環境基準を上回る有害物質の検出量が急上昇した今回の調査結果を受け、会議に出席した築地市場の仲卸業者からは、「(過去の調査に)改ざんがあったと疑われても仕方ない」といった厳しい指摘が相次いだ。
ベンゼンは最大で基準値の79倍
9回目となる今回の調査では、全201か所の調査地点のうち、約70か所で環境基準を上回る有害物質が検出された。ベンゼンは最大で基準値の79倍(0.79ミリグラム)、これまで検出例が無かったシアンも、最大で基準値の12倍(0.38ミリグラム)検出された。
過去8回の調査で、基準値を超える有害物質が検出されたのは3例のみ。いずれも、16年9月に公表された前回調査で、環境基準をわずかに上回るベンゼンとヒ素が、青果棟がある「5街区」の3か所で検出されていた。この時は、ベンゼンが基準値の1.4倍、ヒ素が同1.9倍だった。
今回の調査では、「5街区」だけでなく調査対象となった地下空間の広い地域で、基準値を大きく上回る有害物質が検出されている。こうした数値について、東京都は、
「急激に変動している箇所が多くあり、採取方法などを確認中のため暫定値とする」
としている。
だが、目に見えて大きく「悪化」した今回の調査結果には、専門家会議に集まった有識者からも戸惑いの声が相次いだ。会議の座長を務めた、放送大学和歌山学習センター所長の平田健正(たてまさ)氏は、
「(結果に)戸惑っているというのが事実。ずっと不検出だったものが、突然激増したという経験はなく、どう述べていいのか......。なぜ、こういうデータになったのかは理解ができません」
と漏らす。その上で、今回の数値は「慎重に扱うべきで、暫定値とするのは妥当」だと述べ、
「採水方法に問題が無かったのかを含め、どうしてこうした結果になったのか、原因究明を行いたい」
と話していた。