【羽鳥慎一モーニングショー】(テレビ朝日系)2017年1月6日放送
「脳梗塞の治療『定説覆す発見』」
さまざまな臓器や組織の細胞に分化するiPS細胞(人工多能性幹細胞)は、今後の再生医療の切り札として期待されている。iPS細胞の場合、皮膚などの体細胞に複数の遺伝子を導入して「人工的に」つくりだすが、iPS細胞のような多能性を持つ細胞が、なんと体内に自然に存在していることが最新研究でわかった。
兵庫医科大・先端医学研究所の研究チームが、脳梗塞の組織の中から偶然発見し、「iSC細胞」(虚血誘導性多能性幹細胞)と名付けた。
生き残ったうえ、多様な細胞に変化できるように
脳梗塞は、血管が狭くなったり詰まったりして脳に血液が送られず、脳細胞が壊死する。兵庫医科大の松山知弘教授は、「脳梗塞に陥った脳組織の中には、生きている細胞はないというのが常識」と話す。ところが、今まで「死んでしまった」とみられていた組織の中に生き残った細胞がいた。しかもそれは松山教授いわく、「これから役に立とうとしている、けなげな細胞」だという。
番組で医療問題を長く取材してきた玉川徹ディレクターは、松山教授に直接話を聞いた。それによると、脳の細胞は2%程度しかないが、体全体のエネルギーの20%を消費するほど、多くの栄養を必要とする。脳梗塞で血管が詰まり、栄養が行き渡らなくなると細胞が飢餓状態になる。これで全滅すると思われていたのが、一部は生き残ったうえ、血管や神経ほか多様な細胞に変化できるようになる。これがiSC細胞だ。
玉川ディレクター「iPS細胞にはがん化のリスクが残っています。一方iSC細胞は、もともと人間の体内に存在しているので、がんになりにくいのではないかという見方もあります」
羽鳥慎一アナが「今後の脳梗塞の治療が劇的に大きく変わるかもしれません」と紹介したiSC細胞だが、今後の研究次第では脳梗塞だけでなく再生医療全般に活用できる可能性が膨らむ。
「世紀の発見」なのに研究資金が乏しい
ただし、課題もある。
玉川「松山先生によると、『問題なのはお金がないこと、やりたいんだけどできないんだ』と、電話でおっしゃっていました」
潤沢な研究費が確保できれば大きな進展が望めるが、現実は資金面で苦戦しているようだ。今後、国が研究促進を支援する態勢を取ることが期待される。
それでも、iSC細胞の存在は驚きだ。
羽鳥「世紀の発見、ということでいいわけですね」
玉川「言っていいんじゃないでしょうかねえ」