高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
慰安婦像問題の非は韓国にある 「日韓両国が冷静に」論への違和感

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ウィーン条約が定めていること

   日本側は10億円の拠出は済んでいる。韓国側はソウルの慰安婦像を撤去しておらず、新たに釜山の日本総領事館前にも新設されるという事態になっている。

   日韓合意の背景には、ソウル大使館前の慰安婦像には、ウィーン条約違反のおそれが大きいという事がある。同条約には「接受国は、(略)公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する」とある。

   要するに、各国政府は外国公館の安寧を妨害したり、品位を損なったりすることを防止するため、適切なあらゆる措置を取る特別な義務を持つ。

   ソウルの日本大使館前の慰安婦像については、この条項違反のおそれがあると日本政府は主張している。韓国政府の外交部当局者も、日本の主張が国際的に通用する可能性が高いことを認めているからこそ、2015年末の日韓合意が成立したわけだ。

   韓国国内には10億円を日本に返せという主張があるが、10億円があってもなくても、この慰安婦像がウィーン条約違反であることに変わりはない。

   こうした経緯などを考えると、今回は韓国政府に非がある。それにもかかわらず、テレビのコメンテーターなどで両国ともに冷静に対応すべきだ、とか言う人は、慰安婦像がウィーン条約違反ということすら思い至らない人たちなのだろう。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に 「さらば財務省!」(講談社)、「図解ピケティ入門」(あさ出版)、「これが世界と日本経済の真実だ」(悟空出版)など。


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