アスリートのドーピングをめぐる、「2017年1月からの禁止薬物の変更」によって、新規指定の物質を含む一部の「のど飴」の服用に注意が必要となった。
今回、コンビニエンスストアなどで誰でも手軽に購入できるのど飴の一部製品に含まれている「ヒゲナミン」という物質が、新たに禁止薬物に指定された。ところが、「のど飴」の言葉が独り歩きし、「ヒゲナミン」など禁止物質を含まない「のど飴」までドーピング対象になる、との誤解がネット上の一部で広まり混乱ぎみとなっている。
新たな禁止薬物に「ヒゲナミン」
日本国内のドーピング検査やドーピングに関する啓発活動を行う日本アンチ・ドーピング機構(JADA)が2016年12月7日に発表した「2017年禁止表国際基準 2016年からの変更点ついて」によると、「ベータ2作用薬」の禁止薬物に、新たに「ヒゲナミン」が指定された。
ベータ2作用薬は、一般には喘息の治療に使われているが、大量に使うことで筋力増強の効果が期待できることから、「世界アンチ・ドーピング規程(WADA)」で禁止薬物に指定されている。「ヒゲナミン」は、そのベータ2作用薬にあたるという。
日本アンチ・ドーピング機構は、「ヒゲナミンは、栄養補助食品、のど飴、漢方薬にも含まれていることがある」と指摘。同機構の発表を受けて、日本卓球協会のドーピングコントロール委員会は、2016年1月の変更時にロシアのテニス・プレーヤー、マリア・シャラポワ選手が禁止表の変更を知らなかったために大会への出場停止処分を受けたことを例に、「2017年1月からの新たな変更点」を指導者向けに、協会サイトで改めて徹底した。
「ヒゲナミン」について、日本卓球協会・ドーピングコントロール委員会は「この物質は多くの漢方薬、市販薬、栄養食品に含まれておりますので、これまで以上に薬、サプリメントの使用に際して注意が必要となります」と、注意を喚起。なかでも、「のど飴に注意!」と呼びかけた。
「ヒゲナミン」が、のど飴によく使われているゴシュユ(呉茱萸)やブシ(附子)、サイシン(細辛)、チョウジ(丁子)、ナンテン(南天)といった生薬に含まれているからだ。
同委員会は、「ヒゲナミン」を含む生薬「南天」を用いた「のど飴」は「使用を避けて頂きたくお願い致します」と注意したほか、のど飴の老舗として知られる「浅田飴」にも、すでに禁止物質である「エフェドリン(麻黄)」を含むので、「代替できない」と用心を促す。
一方、その名もズバリ、「南天のど飴」を販売する常盤薬品工業は1月11日のJ-CASTニュースの取材に対し、「南天に含まれる『ヒゲナミン』は、のどの気管を広げて咳を抑える効果があります」と説明。「お客様相談室へのお問い合わせは1件だけです。現時点では商品内容の見直しなどは考えておりません」と話す。