九州大がアトピー性皮膚炎の原因究明  かきむしる辛さから解放されるか

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   あまりのかゆさに、血が出るまでかきむしってしまうアトピー性皮膚炎。辛いかゆみを引き起こす源となるたんぱく質を、九州大学の研究チームが世界で初めて突きとめ、英科学「ネイチャー・コミュニケーションズ」(電子版)の2017年1月9日号に発表した。

   現在、対症療法の治療薬しかないが、研究チームは「将来、かゆみを根本から断つ治療薬の実現が期待できる」としている。

  • 塗ってもかゆくがとまらないことも(写真はイメージです)
    塗ってもかゆくがとまらないことも(写真はイメージです)
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3つのたんぱく質が次々と悪さをしていた

   九州大学の1月9日付発表資料によると、アトピー性皮膚炎は日本人の7~15%がかかっている「国民病」だ。現在、ステロイド剤など皮膚に塗って症状を緩和する治療薬が使われているが、かゆみを直接抑える薬はない。これまでの研究で、かゆみを直接引き起こすのは「インターロキシン31」(IL-31)というたんぱく質だということが知られていた。

   「インターロキシン31」は、アトピー性皮膚炎患者の血液中には健康な人と比べて10倍以上も多い。血液中の免疫細胞が刺激されると大量に増えるが、そのメカニズムはわかっていなかった。

   研究チームは、「ドック8」(DOCK8)というたんぱく質が欠損した患者が重いアトピー性皮膚炎になることに着目した。アトピー性皮膚炎を発症したマウスと健康なマウスで、ドック8の働きを詳しく調べると、「ドック8」が少ないと「インターロキシン31」が増えることがわかった。そして、さらに「ドック8」の増減に「イーパス1」(EPAS1)というたんぱく質が影響を与えていることを発見した。つまり、「イーパス1」→「ドック8」→「インターロキシン31」→「かゆみの発症」という流れが推測された。

   そこで、立証のために「イーパス1」を健康なマウスに注入してみると、「インターロキシン31」が増えた。逆に、アトピー性皮膚炎のマウスの「イーパス1」を減らすと、「インターロキシン31」が減った。人間の患者の免疫細胞で行った実験でも同じ結果だった。こうして「イーパス1」がかゆみの源となっていることを確認した。「イーパス1」を減らす薬剤を開発すれば治療薬につながるという。

   研究チームの福井宣規教授は、発表資料の中で「アトピー性皮膚炎の病態を解明したいという私たちの思いがようやく実を結びました。新しい薬剤を開発につながるよう、さらに研究を進めます」とコメントしている。

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