Twitterを中心としたSNS上で、「SNSポエマー」と呼ばれるユーザーがにわかに支持を集めている。
「ポエム」と聞くと、「幼稚」「黒歴史」といったネガティブな印象を持つ人は少なくないが、ネット上では「オシャレ」「クリエイティブ」といったポジティブへの価値転換が起きている。
ポエム・マーケティングも活況
ポエムは、ネット上では現実離れや幼稚、きれいごとなどと否定的に語られたり、青春時代に稚拙なポエムをしたためた過去が黒歴史として位置付けられたりと、「ネガティブ」な文脈で語られることが多かった。
しかし、最近のポエムのテーマは、主流の「恋愛系」をはじめとして、サラリーマンなどに人気の「社会人あるある」、さらには「自虐」、「自己陶酔」など多岐にわたり、幅広い世代に好まれる側面も出てきている。Twitterの字数制限やハッシュタグ文化は、伝えたい内容を短文に詰め込むポエムと相性が良いこともブームの要因の1つとみられている。
人気ポエマーの「氏くん」さん(@ujiqn)が考案した「#あたりまえポエム」は、あまりに当たり前のことをおしゃれにポエム化したもので、2016年11月にTwitterトレンドワードの1位にランクインしたこともあり、これをもとに数多くの2次創作が生まれている。
ポエム投稿がきっかけでファン(=フォロワー)を数多く獲得し、書籍化や連載記事化、LINEスタンプの販売に結びつく事例も増加している。「恋愛系」ポエムで有名な「0号室」さん(@0__room)は、ポエムの人気がきっかけで、恋愛エッセイ『勇気は、一瞬 後悔は、一生』(KKベストセラーズ)を16年10月に出版。発売から1か月で7万部を突破した。
AC金子みすゞ「こだまでしょうか」で市民権
コラムニストの小田嶋隆氏は著書『ポエムに万歳!』(新潮社)で、ポエムは2012年頃に掲示板サイト「2ちゃんねる」で、ある投稿者が中学時代のポエム帳を発見し、そのあまりの幼稚さに焼却する前に2ちゃんねるで晒すことで「供養する」という試みからフューチャーされた、と指摘。さらに、東日本大震災後に頻繁に放送されたACジャパンのCMに引用された詩人・金子みすゞの作品「こだまでしょうか」で市民権を得たとしている。小田嶋さんは、
「(ポエムは)詩という文芸の衰退を受けて活性化しつつある不定形な感情の受け皿となっている」
とも書き、
「ポエムには巨大な需要があり、有望な市場が広がっている」
という。
NHK・Eテレの『Rの法則』は2016年4月6日の放送で、「10代SNSポエムの世界」を特集した。
番組には心理カウンセラーの塚越友子氏が登場し、ポエムの受容側には
「自分でも気づかなかった思いに気づくことで、自分の心が整理できる」
「周囲も同じような思いを抱えていると知り、不安の解消や安心感に寄与する」
といったメンタルヘルスケアの役割を果たし、発信側にも、
「もやもやした感情を言語化することで、物の見方が広がったり、抽象的に物事を考えられるようになるため、頭と心の成長につながる」
と解説している。