最近、中国などから飛来する大気汚染物質「PM2.5」や「黄砂」、工場やトラックから排出される「ディーゼル粒子」などの微細粒子のアレルギーになる人が急増している。
大阪大学の研究チームが微細粒子の吸入によるアレルギーの発症の仕組みを解明し、米の科学誌「Immunity」(電子版)の2016年12月21日号に発表した。アレルギーの予防や新しい治療につながると期待されている。
「アジュバント効果」とは
大阪大学が12月21日に発表した資料によると、過去の研究報告から、大気中の微細粒子にはアレルギー性炎症を引き起こし悪化させる「アジュバント効果」があることがわかっている。「アジュバント」は「補助・誘導」という意味で、アレルギーの元になる物質に対し免疫反応がますます強くなってしまう作用だが、その仕組みは不明だった。
PM2.5などの微細粒子を吸入すると、気道の奥まで達し、炎症反応が起こる。その対応として、肺の掃除屋である肺胞マクロファージ(免疫細胞の一種)が微細粒子を食べ、自ら細胞死を起こさせる。そして、死んだ細胞と一緒に微細粒子を体外に排出するわけだ。
そこで研究チームは、マウスから回収した肺胞マクロファージを使って多くの微細粒子を食べさせた。その結果、アレルギー性炎症を生じる微細粒子(アルミニウム塩やシリカ)を食べた時だけ肺胞マクロファージが細胞死を起こし、「IL-1アルファ」という免疫刺激物質を放出することがわかった。また、微細粒子をマウスの肺に投与すると、「IL-1アルファ」が2週間にわたって肺の中に放出され続け、その間にアレルギーの元になる物質を吸入すると、アレルギー反応が誘導された。
今回の結果から、免疫刺激因子の「IL-1アルファ」をコントロールすることによって、PM2.5や黄砂で引き起こされるアレルギー性炎症の新しい治療法の開発が期待されるという。