21兆円を国民につけ回し 東電原発処理費用の急膨張

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新旧電力会社を通して利用者が負担

   将来のさらなる金額膨張の可能性はさておき、現段階の21.5兆円を、誰が、どのように負担するのか。これには、東電の経営が密接にかかわるので、経産省は有識者会議「東京電力改革・1F(福島第1原発)問題委員会(東電委員会)」を設けて検討し、12月20日に提言をまとめ、これも取り込んで政府は同日、「福島復興加速のための基本指針」を閣議決定した。

   現行の原則では、廃炉費用などは基本的に東電が負担し、国が資金繰りを支援。賠償費用については東電以外の大手電力会社も負担(国が立て替えた分を返済)するとなっていて、除染費用は国が保有する東電株を高値で売った売却益で賄うとしていた。

   これを基本としつつ、今回の基本指針では、新たな手法を導入した。まず、賠償費は、2020年度から約40年、電力会社に計2.4兆円を負担させるとした。送電線の利用料(託送料)に上乗せする形で、原発を持つ大手だけでなく、電力自由化で参入した新電力会社にも負担させるというのがポイントだ。1キロワット時あたり0.07円、月260キロワット時使う一般的な家庭の電気料金が月に18円増えると試算される。東電など大手が賠償費用を負担し始めたのは2011年の事故後からだが、本来、事故に備えてもっと前から資金を積み立てておくべきだったもので、過去の不足分を今から回収するには、かつては大手の契約者だった新電力のユーザーにも払ってもらうのが公平――という理屈で、新電力は反発しているが、経産省が押し切った。要は、利用者負担ということだ。

   廃炉費用は、約30年かけて東電1社が払うという枠組みは変わらないが、金額が4倍に膨らんだのを賄うため、送配電部門の特例を設ける。本来なら送配電部門で利益がたくさん出たときは送電線の利用料を下げなければならないが、東電に限って値下げせず廃炉に回せるとした。その分、電気代が高止まりすることになり、実態は利用者負担だ。

   除染費用は、汚染者(東電)負担の原則で進めているが、政府が、人が住めるように優先的に整備を進める帰還困難区域の「特定復興拠点」の除染については、復興増税などを原資とする復興予算を除染に充てる方針に転換した。2017年度には300億円盛り込んでおり、5年間で数千億円規模になる見通しだ。「避難された方の強い思いを受け止めての決定」(山本公一環境相)と説明する。

   また、除染の東電負担分は、政府保有東電株の値上がり期待だが、現在1兆円に満たない東電の株式時価総額を約7兆5000億円にまで高める必要があり、容易ではない。

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