介護は人間だけの問題じゃない ペット犬も高齢化「老々飼育」が深刻

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   「老犬ホーム」を利用する飼い主が増えている。これは、年齢を重ねて体の不調が増えた犬を介護する施設だ。

   高齢の飼い主が高齢犬を飼う「老々飼育」が増え、飼い主が体調の問題で犬の世話をできなくなって、やむなく預けるケースが多いようだ。

  • 小~中型犬は11歳ごろ、大型犬は8歳ごろから「高齢犬」とされる(写真はイメージ)
    小~中型犬は11歳ごろ、大型犬は8歳ごろから「高齢犬」とされる(写真はイメージ)
  • 小~中型犬は11歳ごろ、大型犬は8歳ごろから「高齢犬」とされる(写真はイメージ)

老犬ホーム開所の届出が増加している

   獣医師が監修する犬の情報サイト「ワンペディア」によると、年齢が人間に換算して60歳を超える「高齢犬」とされるのは、チワワのような小型~中型犬の場合は11歳ぐらい、ラブラドール・レトリバーのような大型犬は8歳ぐらいからとされる。一般社団法人ペットフード協会の統計では、飼育されている全国の犬のうち10歳以上の割合は、2012年の26.4%から15年には34.5%まで増加した。

   2016年12月19日放送の「とくダネ!」(フジテレビ系)は、老犬ホームについて特集した。それによると、環境省への老犬ホーム開所の届出件数は、13年は20か所だったが、14年は44か所、15年は64か所と増え、需要が高まり続けている。背景には、飼い犬と同時に飼い主の高齢化も進み、体力的に犬の介護をしきれなくなった「老々飼育」の問題がある、としている。

   J-CASTヘルスケアが老犬ホーム「あしあと」(千葉県)を運営するNPO法人「ハーネス夢サポート」に取材すると、担当者は事例を紹介してくれた。ある高齢者の飼い主は体調を悪くして入院してしまった。飼い犬の年齢も17歳と老犬で、寝たきり状態になっている。ホームでは犬の体位を定期的に変え、水と食事を1日に2度補給、トイレも交換と、つきっきりで世話をしている。スタッフとして動物看護師と動物トレーナーが常駐しているほか、容体が悪くなれば提携する動物病院にすぐに連れて行く態勢をとっている。

   同ホームに預けに来る高齢の飼い主の人数は「増えている」と担当者。その理由として「昔は人と同じ物を食べていましたが、最近ではドッグフードの高栄養化が進み、より犬に適した食事ができるようになっています。屋内で飼う家庭や、予防接種を受ける犬も増えています」。こうした飼育環境の改善が、一方では高齢犬の増加にもつながっているという。

夜鳴きに徘徊「犬の認知症」がトラブルに

   老犬ホーム「オレンジライフ湘南」(神奈川県)に取材すると、こちらも「高齢者の方から高齢犬を預かるケースは増えています」と明かす。担当者によると、犬は高齢化により、夜鳴きや深夜徘徊といった犬の認知症の発症が増え、近隣との騒音トラブルにつながるおそれがある。また、犬は歳を取ると後ろ向きに歩けなくなり、家の中で狭い場所に入り込んでしまうと身動きが取れなくなる。目を離せない状態になり、「自宅でしばらく頑張って世話をしたものの、高齢の飼い主の方は体力的にもう厳しい、となってホームに預ける方は多くなっています」と話す。

   このホームでは、同じ建物内にスタッフが住み込み、体調が優れない場合にいつでも迅速に対応できるようにしているほか、夜鳴きをしても騒音にならないよう防音設備を整えているという。

   一方で、「預かるだけ預かって高齢犬に適した世話をしなかったり、檻に入れっぱなしにして放置するネグレクトをしたりする業者も、中にはいる」と指摘した。2009年には、必要な動物取扱業の登録をせずに老犬ホームを運営し、有料で犬を預かった上で山間部に遺棄したり衰弱死させたりした栃木県のNPO法人が刑事告発された。

   担当者は、老犬ホームを利用するにあたっては「動物取扱業の登録を受けているか、預けるにあたって施設の見学が可能か、いつでも飼い主が犬に面会できるか、の3つが守られているかが最低条件だと思います」と話した。

姉妹サイト