国土交通省の調査で、外出しない人の割合が過去最高となった。また、1日(休日)の移動回数の数値をみると、20代は70代に抜かれてしまった。イマドキの20代は、70代より移動する機会が少ない、というわけだ。
こうした傾向の要因について、同省では「高齢者の増加と若者の外出減少」といった点を挙げている。今回の結果が報じられると、ツイッターなどには「ネットで何でもできるから...」といった指摘が寄せられた。果たして、「ネットが外出を減らした」のか。専門家に話を聞いた。
1日(休日)の移動回数で、20代が70代に抜かれる
国土交通省が2016年12月26日に発表した「全国都市交通特性調査=速報版=」(全国70都市、4万3700世帯から回答)の15年の結果によると、家から外出する人の割合は、平日で80.9%、休日で59.9%となり、いずれも、この調査を開始した1987年以来、過去最低を記録した。87年と比べると、平日で5.4ポイント、休日で9.6ポイントも下がっている。つまり、外出しない人の割合は過去最高となったわけだ。
また、2015年の「年代別の1日(休日)の移動回数」では、20代は1.43回で、70代の1.60回を下回った。前回調査(05年)までは20代の数値の方が高く、今回、20代と70代が逆転した形だ。1992年時の数値は、20代2.13回、70代1.20回だった。
こうした傾向について同省は、調査結果と同時に公表した「別紙」の解説の中で、「高齢者の増加と若者の外出減少」などをその要因に挙げている。移動回数の少ない高齢者の人口構成上の割合が増える一方、若者の移動回数自体も減っていることが考えられる、としている。外出しない(移動0回)若者の増加も想定しているようだ。
そんな調査結果に、インターネットのツイッターや掲示板などには、
「金がないからしょうがない。無職だから...」
「ネットで何でもできるから、外出しなくても生活できる環境が整ってるからね。これで在宅勤務とか普及したら、それこそ何日も家出ないの出てきそうだわ」
「家が最高!なんでもあるぞ!!」
などと、肯定的だったり消極的に追認したりする声が少なからず寄せられた。
「低成長時代を生きる若者のスタイル」
果たして、インターネット上の指摘にもあった、「ネットで何でもできるから」という環境が、外出する人(特に若者)を減らしているのだろうか。
博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーの原田曜平氏は、2016年12月28日のJ‐CASTの取材に対し、若者が外出しない現象は、「社会が成熟した、どの先進国の若者にも見られます」と話した。
では、若者はなぜ外出しなくなったのか。利便性が増したネットの影響なのか――。
原田氏は、
「たしかに、ネットの影響はないとはいえません。SNSで友だちとやり取りしたり、さまざまなコンテンツと接したりしているうちに時間を忘れてしまう、ということはあるでしょう。とはいえ、ネットは外出先でも見ることができますから、『ネットが外出を減らした』とは言いきれません。原因は、経済の低成長にあるといえます」
と指摘する。
経済が発展している時代は、若者も未知の世界を求めて海外や国内旅行に出かけて行ったし、買いたいと思ったモノを買ったりした。給料も右肩上がりで上がっていたので、それができた。ところが、経済の低成長時代に入ると給料が上がらなくなるので、やりたくてもできなくなる。おのずと、まったりしてきて「のんびり過ごしてもいいんじゃない」となってくる。
それが、「さとり世代」であり、「低成長時代を生きる若者のスタイルといえます」と語った。